「ニコニコ動画」を創る上で、最もこだわったこと--戀塚昭彦氏に聞く(前編) - (page 3)

永井美智子(編集部)2007年12月17日 08時10分

――けれど、今後は機能が増えていくわけですよね。

 そうですね。それはまぁ、最初はまずこういうサービスだということをみんなに理解してもらうのが重要だったので、それが定着すれば機能を増やしても、多くのユーザーにとっては新しいことが小さいので、溶け込みやすいかなと思います。

 あんまり機能が増えると新しく来たユーザーにとっては分かりにくくなるんですが、その場合はユーザーベースができていればコミュニティ側で解決してくれる道が出てきます。まとめサイトのようなものができたり。まずはユーザーに多く来てもらって、知ってもらうことを考えました。

――ユーザーが生み出した使い方も数多くありそうです。

 最初の段階の設計では想定していなかった部分として、例えば弾幕モードがあります。

 楽曲に合わせてサビの歌詞を書き込むなんてことは全く予想していませんでした。あの現象自体は、その前から2ちゃんねるの実況スレッドであったもので、テレビの番組の曲に合わせて歌詞がずらっと書き込まれていた訳なんですが、その人たちがそのままニコニコ動画に流れ込んで来て同じことをやった。

 そんなにコメントが来ることはあまり考えていなかったので見た目が良くなかった。なので大群衆がいるような感じを見せるためにあえてコメントを散らすといった工夫を加えましたね。ほかにも使われなかった機能は外していて、コメント部分に名前を書く機能などを削っています。

 機能を少なくしてあれば考えなきゃいけないことが減るんで、より深く既存の機能に対して改善の検討ができるんですね。機能が増えれば増えるほどそれは難しくなるので、初期は特に機能を少なくすることに気をつけていました。

――機能を多く盛り込んですごいサービスに見せよう、という考えはなかったんですか。

 昔からKISS(Keep it simple, stupid)という考え方があります。何事も単純で簡潔であることが望ましく、結局その方がいろんな点でいい結果をもたらすというものです。それを実践してみたというところですね。

――それは戀塚さんがもともと持っていた理念ということですか。

 経験則で結局そこに落ち着いてきたというだけです。最終的にはみんなそこに落ち着くと思うんですよ。機能をたくさん広げる戦略というのは、多様な価値観のユーザーを全部飲み込もうと考えるとそういう選択肢しかないんですが、最初からそういう段階を踏む必要はない。むしろ下策だと思います。「二兎を追う者は一兎をも得ず」になる。

 特にニコニコ動画に関しては(動画の上にコメントを載せるという)新しいアイデアが1つあったので、それをまずは核にして紹介するべきだということになりました。

 動画自体はYouTubeなどの外部サイトから持ってきていたので、ただ動画を見るだけだったらYouTubeで見ればいい。特に初期はYouTubeの動画を全部ニコニコ動画経由で見てもらうことが狙いだったので、その魅力をまずどう伝えるかというところに絞りました。

後編につづく

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