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「たいしたことない自分」だから、本を書いた--梅田望夫氏講演:後編 - (page 3)

永井美智子(編集部)2007年11月16日 18時43分
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よこしまな文章は、読者に見抜かれる

 時間も押してきたので、3つめの書かなかった話をしたいと思います。また朗読しますね。143ページです。

 「時間の使い方の優先順位」を変えるにはまず「やめることを先に決める」ことである。それも自分にとってかなり重要な何かを「やめること」が大切だ。お正月の「今年の抱負」が大抵は実現できないのは「やめること」を決めずに、ただでも忙しい日常に「やること」を足そうとするからである。時間は有限なのだ。精神論だけで新しいことはできない。

  (「ウェブ時代をゆく―いかに働き、いかに学ぶか」143ページ13行目〜144ページ1行目)

 何かをやめたので「ウェブ進化論」を書けるようになった、と書いたんですが、何をやめたかは、いやらしくなるなぁとか、差し障りもあるなぁと思って書かなかったんです。

 僕がサンフランシスコでよく行くすし屋があって、そこの大将に「梅田さんはすぐ物事を決めれるよね」と言われたんですが、僕はバンと決めたら動かない性質があって、決めたらとにかくやる。

 それで、僕は6年前、40歳を超えたときに、「年上に一切会わない」と決めたんです。若い人と付き合おうと決めた。でも真剣に付き合おうとすると――はてなの取締役になるとか、CNET Japanで異様な量のブログを毎日書くとか――今までやったものやりながら、というのは難しい。だから僕は、お金をくれる人以外は年上の人と会わないと決めた(笑)。そう言うといやらしいんだけど、ご飯をご馳走してくれるくらいじゃ会わない(笑)。すでに仕事をしている人とは会うけれども、新しい年上の人とは会わない。

 つまりどういうことかというと、日本の会社は基本的に僕よりも年上の人が権限を持っているから、新しい仕事を取らないというのと同義なんです。営業もしないということだから、時間が浮いてくる。

 それよりもっと大事なことが分かった。物を書いても、仕事につながるということがなくなったんです。僕が雑誌の連載とか、物を書き始めた理由は仕事のプラスになるからということだったんです。その文章を見た企業の大物幹部が目を留めて、社内セミナーで講演でもやれということになって仕事になる。文章はお金につながってる。でもそうすると、文章がよこしまになるんです。

 だから僕が1990年代に書いたものを読むと、必ず罠が仕掛けてある(笑)。一般読者が気づかなくても、こういう会社のこの人が読めば電話をかけてくる、という文章なんです。

 ところが年上と会わないと決めると、書いても仕方なくなる。そうすると文章が良くなってくる。だから、コンサルタントが書いている本を見ると「こいつはまだ解脱していないな」というのが分かるんです(笑)。あわよくばコンサルティングしようとか、そういうよこしまなビジネス書が並んでますよ。でもそういう本は、2〜3万冊は売れるけどベストセラーにはならない。読者恐るべし、です。

 「ウェブ進化論」が売れたことで、会ったことのない人からコンタクトが来ました。でも年上と会わないと決めてるから、大臣が来ても会わない。シリコンバレーにいると来るんですよ、政府の委員とか。そういうのは全部、話が来ても断る。だから冒頭の話で出てきたコンサルタント仲間には、「何やってんだよ、それが目的で文章書くのに会わないって、今まで何してたんだよ」と言われます。

 僕はあるとき解脱したんですよ(笑)。それで本が売れた。読者にはニオイが分かるんですよね。この人はよこしまな心がないというのが届くんです。

 これもすべて、「あることをやめる」というところから派生しています。

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