コンテンツ連動が変える著作権ビジネスの未来とは

 10月25日、「東京コンテンツマーケット2007」内のシンポジウム「コンテンツコラボレーションに見るweb2.0時代の著作権ビジネス」が開催された。

 パネリストは手塚プロダクション著作権事務局局長の清水義裕氏、ソニーのコーポレートディベロップメント部ネットメディア開発室チーフプロデューサーである本間毅氏、ファンワークス代表の高山晃氏の3名。モデレータはシンク代表の森祐治氏が務めた。

画像の説明 左から森氏、本間氏、高山氏、清水氏

 手塚治虫作品の版権を扱う手塚プロダクションの清水氏、ソニーという大会社で動画共有サイトを立ち上げた本間氏、「やわらか戦車」などネットアニメの配信・プロデュースを手がける高山氏と、パネリストは三者三様の立場にありつつ、3人とも新たなコンテンツの流通スタイルを取り入れて仕事をしている点が共通している。

 シンポジウムはまず、「ネットを始めとするテクノロジーの進化によって、オリジナルコンテンツに加工が加えられ、再生産•再創造されることが当たり前になりつつある中で、どのような取り組み方やサービスがあり得るのか」(森氏)について議論した。

 最初に森氏が「これまでコンテンツは、実態材として考えられ、レコードやCDなどにパッケージ化されてきた。デジタル化されてもその思想では、DRMをつけて制限をかける方向になる。しかし、コンテンツを情報材として扱うレッシグのクリエイティブコモンズ的な考えも普及し始めており、コンテンツの制作者であるクリエータが、流通方法を決定できるサービスも登場し始めた。そういった意味でコンテンツコラボレーションという言葉が聞かれるようになってきた」と概論を述べた。

 続いて清水氏は、人気漫画家の浦沢直樹が『鉄腕アトム』を翻案した『プルート』の例やデザイン集団play set productsによるアトムのイラストなど、積極的なコラボレーション展開を進める手塚プロダクションの姿勢や実績を解説した。

 「手塚の没後、強力なライセンス会社になって、ライセンシーを上げていこうと考えていた時期もありました。しかし、無許可のコピーを全部退治しようと思ってもそれは不可能です。逆に手塚作品を、自分だったらこうしたいと考えるクリエータはたくさんいます。作品を囲い込むのではなく、そういったクリエイタの創造性を活かす方向性に舵を切ったんです」

 また、清水氏は自身が事業委員長を務めている日本動画協会が、秋葉原で10月に開催したアニメキャラクターのコラボレーションイベント「JAM2007」の試みも紹介した。

画像の説明 左から森氏、本間氏、高山氏、清水氏

 一方、本間氏は2007年4月にスタートしたソニーの動画共有サイト「eyeVio」の独自性についてプロモーションした。

 「『eyeVio』は、プライベートなコンテンツを安心して共有できる場所を目指しました。著作権をリスペクトするスタンスを崩してはいませんが、より著作権の概念を柔らかくすべきとは思っています。『eyeVio』では投稿者が映像の営利目的での転用を許可するのかどうかを指定できるようになっています」

 最後に、高山氏が「やわらか戦車」のプロデュース方法や、今後のネットアニメの流通がどうなっていくのかを論じた。

 「これまでのヒットの方程式は、[企業プロデューサー→マスコミ→ユーザー→ネット]という流れでした。しかし、『やわらか戦車』は[CGM→大手ネットサイト→ユーザー→マスコミ]という流れでヒットしました。今後もこの方向でヒット商品は出てくると思います。我々は、著作権についてもここは守った上で、ここは攻めましょうという話をしています」

 シンポジウムは森氏が「実は著作権の法的な解釈には幅があるにもかかわらず、目に見えない慣習などによって関係者たちが自分たちでクビをしめているのではないか」という話をして終了した。ただ、シンポジウム自体は現場のクリエータやプロデューサーの試みが徐々に身を結び、古い著作権の概念がいよいよ形骸化しつつあるのではないか、という印象を浮き彫りにした。

 「東京コンテンツマーケット2007」は独立行政法人中小企業基盤整備機構関東支部が主催、経済産業省中小企業庁および関東経済産業局が共催を務め、第20回東京国際映画祭実行委員会および首都圏情報ベンチャーフォーラムが協力し、デジタルコンテンツ協会、CG-ARTS協会、デジタルメディア協会が後援した。

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