2005年末に、Googleが無料のウェブ解析ツールをリリースした事により、ウェブ解析というツールの認知度と、企業の積極的な導入は加速度を増してきたように思われる。無料のツールがある一方、エンタープライズ系のウェブ解析ツールはより高度に進化し、それらを使いこなす先駆的企業は、新たな付加価値を生み出している。
ウェブ解析ツールによる、ビジネス最適化のコンサルティングを生業とする筆者が日々感じているのが、ウェブ解析版“デジタルデバイト(情報格差)”である。ウェブ解析ツールを、業務プロセスにおける重要な基幹システムであるという認識を持って活用している企業は、ますますコスト削減や利益向上などの価値を生み出している。その一方で、いまだウェブ解析ツールの価値を見出せない企業は、ツールを導入するだけで何も変わらないばかりか、そのツールを無用のコストとして止めてしまうケースもある。
ウェブ解析の価値を決めるのは、多くの場合、ツールそのものと言うより、導入後にどのように組織の中で“ウェブ解析で取得できたデータ”を生かしていけるか、そのプロセスにある。最近では、LPO(ランディングページ最適化)やEFO(エントリーフォーム最適化)といった、プロセスの一部をサービスとして提供しているものもあるが、それでは企業はウェブ解析を十二分に活用しきれているとはいえない。とはいえ、プロセスを導入するためには、ウェブ解析に対するMindset(マインドセット)、すなわち発想や考え方をまず学ぶ必要があると私は思うのである。
そこで、本連載では5回にわたり、企業でウェブ解析を活用されるビジネスパーソンが半歩先を見据えたマインドセットをお持ちいただけるよう、最先端のウェブ解析活用の動向を織り交ぜながら、ウェブ解析成功のためのポイントをご説明していきたいと思う。
まず初回の本編では、現在までにウェブ解析の先駆的企業が通ってきた軌跡を、4つのステップで紹介したいと思う。これにより、今自社がどのステップに位置し、また今後どのような可能性があるのかをご理解いただけるかと思う。
Understanding(理解)→ Optimization(最適化)→ Automation(自動化)→ Multi-Channel(マルチ・チャネル)
最初のステップとしては、自社のウェブサイトの現状理解をするということである。そんなことは、あたり前と思われる方もいらっしゃるかと思うが、そのあたり前ができてないことが実は多い。ポイントとしては、2つある。ひとつは、適切なツールを導入すること。もうひとつは、そのツールで、何を測定したいのかを明確にすることである。
ウェブ解析ツールの選び方に関しては、サーバログ型やら、ウェブビーコン型やら様々なタイプが存在するので、今回の限られた紙面では十分な説明ができないのが残念だが、ひとつだけ考慮していただきたいのは、ビジネスパーソンが使いやすいツールでなければならないということである。データが取得できればいいという点だけに重きをおくと、すぐに欲しいと思う情報がIT部門に依存して1カ月に一度程度しかデータを出すことができないというケースもある。また、データを取り出した後も、ビジネス判断を行いやすいレポートにするには、あちこちのデータをひとつのレポートにまとめるなど、手間がかかる場合がある。
もうひとつの重要なポイントは、ウェブ解析ツールで何を測定したいのかを明確にすることである。これは言い換えると、ウェブサイトのゴールと、そのゴールの進捗具合を確認するKPI(主要業績評価指標)という指標を持つということであるが、これに関してはとても重要なので、次回詳しく説明させていただきたいと思う。
第2のステップは、ウェブ解析で取得できたデータによる、ウェブサイトの最適化である。多くの企業では、データは取得できるようになったけれども、そのデータを基にどうアクションを起こしてよいのかわからないと、このステップでつまずいてしまうことが多い。
また、最適化のアクションを起こせない理由としては、単にノウハウがないというだけではなく、データに基づく意思決定を行うという組織体制や社内文化が浸透していないということに依存しているケースも多い。
ウェブ解析成功の秘訣のひとつとして、“適切なデータを適切なタイミングで適切な人たちに配布する”ということがあるのだが、ウェブ解析をマネジメントしている部門と、ウェブページを企画したり、製作したりしている部門とがコミュニケーションできていないことが往々にしてある。
これらの組織的な課題を、我々コンサルタントは“ウェブ解析ガバナンス”と呼んでいるのであるが、これについても後の回で詳しく説明させていただきたいと思う。
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