東芝の新型プロセッサ「SpursEngine」、CEATECでついに初公開

 10月2日から千葉・幕張メッセで開催されている「CEATEC JAPAN」で、東芝が新たに開発したメディアストリーミングプロセッサ「SpursEngine」とSpursEngineを用いたアプリケーションがデモ展示された。10月5日の出展社セミナーでは、東芝セミコンダクター社システムLSI事業部先端SoC開発センターの増渕美生氏が、開発経緯や機能の詳細について解説した。

「SpursEngine」 参考展示された「SpursEngine」

 「SpursEngine」は、IBM、ソニーグループと共同開発した高性能プロセッサ「Cell Broadband Engine」(Cell/B.E.)のSynergistic Processor Element(SPE)コアを用いた新型メディアストリーミングプロセッサ。アーカイブや編集など民生レベルでのフルHD動画加工ニーズの高まりを受けて、俊敏で快適なフルHDライフをサポートするものとして開発が進められていた。

 具体的なアプリケーションとして紹介されたのは、ウェブカメラで撮影した人物の顔に化粧、髪型などのCGをリアルタイム合成処理する「FACEMOTION」のほか、手の動きでAVソフト操作を行える「ジェスチャリモコン」、録画番組から出演者の顔検出が可能となる「顔deナビ」、古いSD映像を鮮鋭なHD映像化する「超解像技術」の4点。いずれも東芝ブースでデモ展示が行われ、「顔deナビ」は同社のノートPC「Qosmio」に搭載した形でも展示された。

増渕美生氏 東芝セミコンダクター社システムLSI事業部先端SoC開発センターの増渕美生氏

 「SpursEngine」はSPE4基とMPEG-2、H.264方式のエンコード・デコード専用回路(ハードウェアエンジン)で構成され、映像認識(顔トラッキング、ジェスチャなど)や映像処理(動画編集エフェクトソフトコーデック)など高度なリアルタイム演算認識・処理はSPEソフトウェアで、MPEG-2/H.264エンコード・デコードなどの定型処理はハードウェアで行う。増渕氏は、このソフト・ハードのベストバランスが「柔軟性と低消費電力を兼ね備えた高性能を実現した」と説明した。

 ソフトウェアは標準ソフトを活用することでユーザープログラムを開発可能としており、基本ソフトウェアAPIとミドルウェアAPIの2階層、および独自のコードも開発可能。プログラム実行環境は、ホストシステムからSpursEngineにSPEコードを送り込んで実行する仕組みとなっている。

 増渕氏は、SpursEngineの製品ポジショニングについて「グラフィック性能、汎用処理性能(CPU)に続く第3の軸」とし、フルHD世代のデジタルライフに向けたメディアストリーミングプロセッサとして、映像認識処理を中心に新たな応用可能性を開拓するとした。また、今後の展開については「さらなるパフォーマンス向上と低消費電力化」を挙げ、次世代Qosmioへの搭載に向けて開発を進めていく考えを示した。

「FACEMOTION」が注目集めた東芝ブース

 東芝ブース内のデモでとりわけ注目を集めていたのが「FACEMOTION」だ。大量の入力映像をリアルタイム処理し、人物の顔の位置や向き、表情などを推定するメディアストリーミング処理と、SpursEngineおよびカメラ・GPU制御、髪型や化粧を変更した出力画像生成など、「さまざまな機能をPCで手軽にできるようになった」(増渕氏)ことをポイントに挙げた。

 2005年のCEATEC JAPANでは、同種のフェイストラッキング技術を大掛かりな設備(プロセッサはCell/B.E.)でデモ展示し、当時も話題を集めていた。増渕氏は「PCでできるようになっただけではなく、今回は全体の3分の2程度のパワーで(デモが)実現できている」とし、さらに高性能を発揮できるポテンシャルがあることを示唆した。

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