大口 3年くらい前にスタートし、最初は試作を繰り返して原理検討に時間をかけました。その最初の段階で沢井に参加してもらって、よりコンセプチュアルにする作業を続けました。
沢井 デザイナーとしては、この技術をどう商品化するかがポイントだったんです。この部分が固まるまでにはかなり時間がかかりましたね。
AIBOの技術を音と動きで表すためにどうフォーカスするかと。音と動きを組み合わせた時に必要な物は何か、この2つの要素を強くアピールできる物は何か、とブレストを重ねてキーワードを抽出していきました。
でもRollyの3つある特徴って、実は「動き」の1つに集約されるんです。例えば、スイッチでありデバイスでもあるRollyを転がす・動かすことで操作するユーザーインターフェースは動きの一つと言えます。
それから、過去ロボットのデザインに関わっていた時に経験した「静的な物と動く物ではプロダクトの性質がまったく違う」ことも取り入れつつ、モーション(動き)がエモーション(感情)を引き出すよう工夫しました。
単に動くだけでなく、感情も動かせるプロダクトであるということがRollyの大きな特徴だと思います。
大口 ええ。可動部の表現からも卵型が一番自然だし、実在する物を想像させないという利点もある。手にも持ちやすいし万人受けするだろうという考えもあったので……。そう思うと、初期の方向性をブレさせずに商品化できたと思います。
沢井 私に話が来た時点でもうこの形になっていたので、正直何をやったらいいのかわからず困りました(笑)。ただ、もうこれ以上崩すことのできない美しい楕円でしたから、むしろその後のデザインのフックにはなってくれました。
大口 いえ、表面的なデザインはあまり気にしていません。AIBOの時、実は犬の形をした物が動くからかわいいんだ、と表面的なデザインが評価されていると思っていたんです。でもRollyの実機を初めて動かした時、みんなが卵型のこの筐体を感動の眼差しでみていたんです。
だから実は、この動き自体が愛着に結びついているんだとわかりました。多分、動かなければここまで注目を集めなかったと思いますし。
沢井 動きには形に関係なく感情を揺さぶる力があるとわかった事は、ソニーがAIBOの開発で得た重要な財産だと思います。ただ陳腐な動きでは感動を与えることはできなくて、意志を持った精密な制御や動きだからこそそれが可能になる。
しかもRollyは卵型というプリミティブな形だからこそ、余計に想像力が働いて感情が動く。これはその成功例だと思います。大口 例えば、アームがゆっくり開閉するような動きってロボットには当然の技術なんですよ。オーディオプレーヤーの実用面から言えば必要ないんでしょうけど、我々が求める表現には必要不可欠。この技術があるからこそ、Rollyでは豊かな表情や動きを表現できるんです。
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