米上院商務委員会は米国時間9月27日、自社サーバ上に児童ポルノサイトが存在することを知りながら当局に通報しなかったインターネットサービスプロバイダー(ISP)に対する罰金を厳しくする法案を承認した。
現行の連邦法の下でも、ISPは自社サーバ上で児童ポルノを発見し次第「合理的に可能な限り早期に」全米行方不明・被搾取児童センター(NCMEC)のCyber Tipline(ネット上の通報受理システム)に通報することが義務付けられている。ただし、ISPは自ら積極的に違法画像を探すことまでは義務付けられていない。
上院商務委員会は9月27日午後、満場一致の発声採決で、このThe Protecting Children in the 21st Century Act(21世紀の子供たちを守る法案)を可決した。同法案では、現行法に従わなかった場合に科される罰金が3倍に増額されている。初犯の場合は15万ドル以下の罰金が科され、その後違反を重ねるごとに30万ドル以下の罰金が科される。
またISPは、現行法では義務付けられていなかったさまざまな情報の報告が義務付けられる。それらの情報の例としては、(児童ポルノの掲載に)関与した人物または通報の対象であるコンテンツに関連するすべてのユーザーID、メールアドレス、地理情報、IPアドレスなどだ。
しかし、このような罰金の増額や報告すべき情報の追加が本当に必要であるのか否かは必ずしも明らかではない。NCMECのErnie Allen会長が2006年に議会で行った発言によると、NCMECのCyber Tiplineは、1998年の開設以来、40万件以上の情報を警察に提供し、数百件の逮捕、起訴に貢献してきたという。
またAllen氏によると、NCMECは、AOL、Microsoft、Yahoo、Google、Earthlink、United Onlineなどの企業と協力し、児童ポルノサイトを閉鎖に追い込むための技術的解決策を考案するという。
混同のないように付け加えると、この法案は、商務委員会の有力メンバーであるTed Stevens上院議員(アラスカ州選出、共和党)が1月に提出した同名の法案とは全くの別物だ。Stevens議員はその法案で、2006年に大きな論議を呼んだオンライン上の児童保護のための2つの施策を復活させた。その施策とは、学校や図書館からのソーシャルネットワーキングサイト(SNS)やチャットルームへのアクセスを制限することと、露骨な性描写を含むウェブサイトに「Sexually Explicit(露骨な性描写を含む)」という注意書きを付していないサイト運営者に懲役刑を科すこと、の2つだ。
しかし、9月27日に商務委員会で可決された法案には、これら2つの案はいずれも盛り込まれていない。その代わりに、同法案では、学校や連邦政府の監督機関に対し、オンライン上の安全に関する教育活動の立ち上げや、「オンライン上の安全や技術に関する作業部会」の創設を求めている。この作業部会には、オンライン上の安全に関する教育活動、アクセス制限ソフトやフィルタリングソフト、ペアレンタルコントロール技術の「普及状況」に関する報告書の発行に加え、それらの技術の使用を促進するために利用可能な「奨励策」に関する提案が義務付けられる。そして、(作業部会による)それらの評価が、新法制定を求める声の高まりにつながると考えられている。
また同作業部会には、「児童犯罪に関連する」ユーザー記録の保持について、各ISPがどのような取り組みを行っているかを調査する任務も課される。そして、作業部会の調査結果次第では、Alberto Gonzales前司法長官がここ数年進めていたISPに対するデータ保持の義務付けの推進の復活に向けた第一歩となる可能性もある。
しかし、いつものことながら、同法案の今後の行方は不透明だ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したも のです。海外CNET Networksの記事へ
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