パイオニア、シャープと業務・資本提携で株価回復はあるか

 パイオニアとシャープは9月20日、業務・資本提携すると発表した。この両社の資本・業務提携の発表を受け、翌日21日のパイオニアの株価は、朝方寄り付き直後こそ一時、前日終値比で40円高の1441円まで買い進まれたものの、その後は一転売りが優勢となり、終値は結局前日比31円安の1370円と続落となった。この日の株価の動きで見る限り、今回の提携に対する市場関係者の見方はかなり厳しいものと言えそうだ。

 パイオニアは12月20日、シャープを引き受け先とする3000万株(414億円)の第三者割当増資を実施し、増資完了後にシャープが発行済み株式の14.28%を保有する筆頭株主になる。一方、シャープは同月、保有する普通株式1000万株(発行済み株式の0.9%)をパイオニアに197億5000万円で売却する。

 今回の資本・業務提携について両社では「お互いが得意とする映像・ディスプレイ技術、さらにシャープの得意とするデジタル技術、通信技術、デバイス技術などと、パイオニアの得意とする光ディスク技術、音響技術やカーエレクトロニクス技術など、お互いのリソースを活用し、積極的に協力することで、新たな事業を創出し、両社の企業価値が図れるものと判断した」としている。

 なかでも特に注目したいのは、薄型テレビでの提携だ。シャープは、「液晶のシャープ」の地位をさらに高めるために、2010年の稼働を目指し大阪府堺市に約3800億円の新工場を建設する。一方、パイオニアは6月にフルスペックの50型プラズマ・ハイビジョンテレビを発売、さらに次世代ディスプレイとして有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)の開発も進めている。

 パイオニアは、プラズマディスプレイでは国内3位のシェアながら、2007年3月期の連結最終損失が67億円と3期連続の赤字となるなど業績の不振が続いている。このため、パイオニアでは、今回の第三者割当増資で調達する資金により、液晶テレビ国内首位のシャープからパネルの供給を受けて42型以下の液晶テレビに参入することを推進すると同時に、低迷するプラズマディスプレイ事業の建て直しを図る。

 市場関係者は「シャープは現在、液晶ではトップシェアを独走しているものの、次世代薄型ディスプレイの有機ELやプラズマディスプレイの開発も手掛けておきたいという意図があるのではないか。また、パイオニアの持つカーナビゲーションや次世代DVDの技術力にも注目しているようだ」としている。

 最近の電機業界では、日本ビクターとケンウッドの経営統合、京セラによる三洋電機の携帯電話端末事業の買収交渉など再編機運が風雲急を告げている。今回のパイオニア・シャープの資本・業務提携が、さらなる再編加速につながる可能性もありそうだ。

 パイオニアの株価は、6月11日に年初来高値1837円をつけて以降、ほぼ一貫して下落傾向をたどっていたものの、9月11日には年初来安値の1262円を底に反発に転じ、現在は1300円台へと回復をみせている。シャープとの資本・業務提携で経営状態の悪化傾向は、ひとまず食い止められる可能性が高まるというプラス要因はあるものの、一方で今回の第三者割当増資に伴って、発行株式数が15%程度増加することから、株式の希薄化による株価下落懸念がつきまとうことになりそうだ。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]