高木:その化けの皮をはがすのがここしばらくずっと行われてきたインターネットの役割だと思います。それは、まさにこの10年間の闘いだったと思うんです。
例えば、その10年前にしたら、小倉先生ぐらいの弁護士さんが何か発言していれば、それはもうなかなかそういうふうにものを申すこと自体が通常の社会で行われていなかった。それが実際にコメント欄に書けるようになり、それをみんなで一緒に見ることでみんなもいろいろな評価をするようになっていったわけですよね。
そういった匿名でやることの有益性を、今では、おそらく相当な割合の人が理解したのが10年前とはだいぶ違っていると思います。そういう役割は果たしたので、そろそろバランスをとるためのことを考えてもいい時期かなとは思います。単純にこれまでどおりという話ではないと思います。
伊知地:私は実名と匿名の両方があるべきだと思っています。
あと、完全に誰だか突き止めるという話と、匿名性は違う話なので、基本的には匿名性でいい。
その上で、公表したい人はすればいいし、公表したい人同士の世界を作りたい人は作ればいいし、そうじゃない人も作ればいいと思います。
佐々木:実名にしましょうという意見に対する反論としてネット上でよく言われているのは、じゃあ僕なんかは普通のサラリーマンで誰も僕の名前なんか知りません。僕の名前を公表するのに何の意味があるんですかという人は結構多いですよね。小倉先生は、そういう人に対してはどう思いますか。
小倉:意味がないというのだったら名乗ればいいじゃないですか。現実社会でいろいろなところで人に会って、あるいは自己紹介するときに、自分は普通の平凡なサラリーマンであって、自分の名前は大して有名じゃないから名乗らないという言い方をしたらやっぱり倫理としては変な話ですよね。
佐々木:でもね、今の日本社会は相変わらず、世代間対立が結構激しくて、例えば今の若者、20代、30代の人が考えていることと、50代が考えていることはかなり違うわけですよね。そうすると、例えば今の20代、30代が普通に考えたことをインターネット上にばんばん、業界についてとか会社について書くとものわかりの悪い上司から怒られると。
それはやっぱり社会人としては困るし、例えばそれこそよく匿名言論を攻撃している鳥越俊太郎氏とか、柳田邦男氏という人たちがいて、あの人たちが実名を名乗れと言っている。
でも、あの人たちはそれで飯を食っているんだから実名はOKでしょう。というか、実名を名乗らないと知名度は上がらないわけです。でも、逆に普通の人たち、本当にただの会社員が自分の会社の内輪話とか業界の問題点を書きたいと思ったときに、そこで実名を名乗る必要性はあるのかどうかは、僕は結構疑問だと思うんですけどね。
伊知地:それが障害になりますからね。それがあるがために書けないという人がたくさん出てきていますね。
小倉:本当にそうなのかなというのが一つあるのと、じゃあそれを許すことによって、今度は本当はその会社のメンバーでもないのに、その会社のメンバーであるかのように偽装している例もたくさんあって、それとの峻別が成されないと結局、せっかく内部告発のようなことをネットに書いても、また嘘かという話になってしまう可能性もある。
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