次世代ゲーム機と呼ばれる機器が出そろって、約8カ月。
Xbox 360やPS3は、これまでにない映像とサウンドで、衝撃的な体験を提供してくれた。また、WiiはWiiリモコンといった、新しいインターフェースで、これまでゲームに対して興味を持っていない人たちに、ゲームの面白さを伝えることに成功した。
これらゲーム機、ゲームソフトの開発で欠かせないのが、開発ツールと呼ばれるソフトウェアだ。
現在のゲーム開発では、パブリッシャーからデベロッパーへの要求として、ハイクオリティな映像やサウンドはもちろん、開発期間とコストに対しての要求も高まる一方だ。
ファミコンやスーパーファミコン、メガドライブといった、8ビット、16ビットCPU時代のゲーム機では、開発ツールもメーカーが独自に開発をすることが少なくなかったが、現在の超高性能なゲーム機では専門のメーカーが提供する開発ツールを使用する場合がほとんどだ。
それら開発ツールの中で、大きいシェアを占めているのが、Autodeskのプロダクトだ。特に、「Autodesk Maya(以下:Maya)」「Autodesk 3ds Max(以下:3ds Max)」「Autodesk MotionBuilder(以下:MotionBuilder)」は、ゲーム開発にとって必須といえるツールになりつつある。
今回、これらプロダクトの開発責任者である、オートデスク メディア&エンターテインメント バイスプレジデント マーク・プティ氏に、さらに重要度が増す開発ツールにおいて、ゲームクリエイターが求める要素とは? そしてそれに答えるためにどのような施策をとっているのかを聞いた。
ゲーム開発の現場で支持された要因は、2つあると思います。
1つめは、我々のプロダクトを使って作られる映像のクオリティです。クオリティの高い映像は、我々のプロダクトがアーティストの持っている考えに即したツールであるといえるでしょう。
2つめは、1つめと同じくらい重要なことなのですが、我々のツールを使用することができる人が、たくさんいるということです。
我々は、トレーニング施設の用意や、教育機関と親密に関係を持ち、教育現場をサポートするなどしています。使える人が多いと言うことは、結果的にゲームメーカーのお役にたっていると思います。
我々は、お客様の要望に応えることは非常に重要だと考えています。そして、そのためのコミュニケーションも重要です。
"ゲームアドバイザリーカウンセル"と我々は呼んでいますが、お客様と直接コミュニケーションをとり、プロダクトへの要望などを直接ヒヤリングするチームがいます。
このチームがミーティングのため、2カ月ほど前に、本社のあるモントリオールから日本に10人ほど来日し、ゲームデベロッパー各社へ次の"3ds Max"や"Maya"、"MotionBuilder"などをはじめとする弊社プロダクトのヒヤリングを行っています。
さらに、日本には"Maya"のサポートチームとは別に開発チームが常駐しています。
このように、重要なお客様である日本のゲームデベロッパーに対して、我々は特別な対応を行っています。
個々の要望について具体的にお答えすることはできませんが、開発の際のテーマならお話しすることができます。
まず、複雑なマネジメントへの対応です。簡単にいうと、「もっと大きなデータを、もっと簡単に扱えるようにしてほしい」という要望です。
もう1つは、クオリティの高いアニメーション制作ができるか、という点です。スポーツゲームをはじめとして、クオリティの高いアニメーションへの要望は非常に高く、我々はアニメーション制作のために、HumanIK(注:"Maya"や"MotionBuilder"で利用できる人物アニメーション用に特化して開発されたライブラリ)のような、アニメーション機能のサポートに力を注いでいます。
その他では、PS3などの高性能に対応するよりも、DSやWiiといった比較的ライトなコンソールへの、コストのかからないツールへの要求が多くなっています。
任天堂のハードウェア(ゲームキューブ、DS、Wii)はアーキテクチャが似ているので、コストを下げることが可能でしょう。我々も、それに対応できるように準備を進めています。
逆に、PSPで低価格なソフトが比較的少ないのは、そういう点でおくれているのかもしれません。
ゲーム製作では"3ds Max"と"Maya"は、同じように使用されるプロダクトです。どちらも非常に堅調なビジネスで収益を上げています。我々のプロダクトを使っていただいているお客様は、みな大切なお客様です。ですから、"3ds Max"と"Maya"については、どちらのプロダクトも開発を続けていくことをお約束しています。
この2つのプロダクトの連携という意味では、FBXフォーマット(編注:プラットホームに依存しないエクスチェンジフォーマット。異なるプロダクト間でのデータ受け渡しが可能になる)を使うことで、アセットを移動させたり行動させたりすることができ、有効性を最大化しています。
こうしたことから、ゲームのデベロッパーの方には、"3ds Max"と"Maya"、そして"MotionBuilder"を組み合わせて使っていただくケースが増えてきました。
そして、ゲームオーサリングの部分も、ミドルウェアとの橋渡しとして"Maya"や"3ds Max"を利用することで、HumanIKなどをゲームエンジン内で最大限利用していく方向性が考えられます。
たとえば、UBISOFT社の「Assassin's Creed」、は"3ds Max"とのHumanIKを利用して製作されました。
このように、HumanIKを利用したのと同じやり方で、開発の工程を簡略化していく、効率的にしていくということができると思います。
"Maya"と"3ds Max"、さらに"MotionBuilder"をつなげるFBX、このFBXが、今後はゲームエンジンの中に入り込んで、プレイバックするための橋渡しを果たすようになっていくと思います。
現在の開発現場では、多くのプログラマーがゲームエンジンを再現するために、数々の工夫を行っています。この部分にFBXがコンポーネントとして活躍するというケースが出てきました。
ですから、ゲームのデベロップメントのためのツールという側面と、ゲームの中でのミドルウェアとしてのテクノロジーを開発するという2点が、我々のストラテジーとなります。
具体的な時期については、ノーコメントとさせてください。
ただ、"9"は昨年のSIGGRAPHで発表しています。"8"も2005年のSIGGRAPHで発表しました。その前のバージョンも、です。あとはご想像にお任せします(苦笑)。
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