慶応大学デジタルメディア・コンテンツ統合機構(DMC機構)は7月27日、東京・三田の慶応義塾大学北館ホールで「緊急産官学フォーラム デジタル時代の融合法体系を考える」を開催した。
これは去る6月19日に公表された総務省「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」(融合法体系研究会)中間とりまとめを受けて行われたもの。
登壇者には、総務省情報通信政策局総合政策課の阪本泰男課長、同研究会メンバーでもあるDMC機構の中村伊知哉教授、「放送と通信の在り方に関する懇談会」(竹中懇)座長を務めた松原聡東洋大学経済学部教授、元竹中総務大臣秘書官で現DMC機構准教授の岸博幸氏、TBSメディア総合研究所の前川英樹社長と注目の顔ぶれが出揃った。コーディネーターは金正勲・DMC機構准教授。
融合法体系研究会が示した中間とりまとめでポイントとされたのは、?放送・通信の縦割りとなっている法体系を「コンテンツ」「プラットフォーム」「伝送インフラ」という「レイヤー型構造」へ切り替えること、?全9本に区分けされる関連法律を「情報通信法」(仮)として一本化すること──の2点。
報告の詳細について説明した総務省の阪本氏は「縦型→レイヤー型への切り替えは、戦後60年法体系を抜本的に見直すもの」と評価した。また、現在集計中のパブリックコメントの状況について「基本的に放送事業者はレイヤー構造型に反対、通信事業者は賛成の立場をとる傾向がある」と紹介した。
研究会メンバーの中村氏は、ポイントとなった内容について一定の評価をしつつも「本来はコンテンツ、サービス、設備と分けるのが理想」とレイヤー区分について難色を示した。
一方、竹中懇において「ボールを投げた」形となった松原氏は「(9本の法律を)一本化しても、中身が変わらなければ意味がない」と単なる法整理に終わらぬよう注意を呼びかけたほか、法整備が進む中での展開として「総務省、経済産業省の関連部局統合など、行政の融合につながるのでは」との見通しを示した。
唯一、放送事業者の立場で出席したTBSの前川氏は、法体系整備について理解を示しつつも「(中間とりまとめ報告内容は)しっくりこない部分が多い」と注文。報告案が国家による情報管理などの面でメディア規制強化につながる可能性を持つことに懸念を示したほか、「メディア」の概念規定がないこと、パブリックコメント募集前の時点でレイヤー構造型への切り替えが規定路線のように感じられることなどを問題点として指摘した。
2001年のIT戦略本部報告書作成にも携わった岸氏は、今回の報告内容について「歴史に残る報告書」と高く評価。また、放送事業者の「メディア規制」という反応に対しては「むしろ、放送事業者を『言論の自由』の呪縛から解き放つきっかけとなる」と反論した。
その上で、報告内容が現在無法状態にあるネットコンテンツの規制につながることやNTT、ローカル放送事業者などの枠組み整理につながることを予見し「総務省は敵だらけになるだろうが、反発に負けずに(報告内容を)突き進めて欲しい」とエールを送った。
今後の課題については「コストのかかる作業であり、より明確な国民へのメリットを示すことが必要」(中村氏)と説明。松原氏も「技術的には放送・通信の伝送路融合が可能となる中、サービス面から伝送路融合をどのように活かすか。NTTやKDDIなど通信インフラを持つ事業者と放送事業者が組んでどのようなサービスができるのか、具体的に考えていくべき」とした。
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