技術の海泳ぐパワーテクノロジーを支える商人哲学 - (page 2)

島田昇(編集部)2007年06月16日 02時26分

 パワーテクノロジー取締役会長の中島正三氏──。パワーテクノロジーという会社を理解するには、中島氏という人物像を知る必要がある。

商人(あきんど)の誕生

 中島氏は1970年、大阪で生まれた。父親は不動産会社や病院を経営する経営者で、幼い頃の中島氏は商売人の激しい浮き沈みの現実を目の当たりにしてきた。商売が軌道に乗っている時は周囲の人がうらやむ豪邸で過ごすこともあったが、3度訪れた父親の会社が倒産した時には、家族4人で一膳のご飯を分け合うという貧しい生活も体験した。

 「おやじは商売が下手だ。借金ばかりしている。もっと儲かる商売があるはずなのに、子供の自分は親に頼ることしかできない。きちんと商売の勉強をして、そのうち儲かる会社をつくってやる」

 新聞配達、昆虫の採集と販売──。父親の存在を反面教師として育った中島氏は、気がつくと手当たり次第に子供でもできる商売に手を出し始めていた。塾講師で生計を立てる計画で大学に進学すると、私塾経営と予備校講師で毎月200万円以上の収入を得るまでになった。

 塾講師の経験を通じて自身の商才を見出した中島氏は、当時「ザ生保」と呼ばれていた保険業界に飛び込む。大きな組織に身を置きながら、人事やマーケティングなどの実学を学ぶためだ。

 「学ぶことがなくなった」と感じた9年後の2002年4月に保険会社を退職。その後始めたコンサルティング業務のクライアントを通じて前述の玉上氏と出会い、2003年4月にパワーテクノロジーの前身となるプレステージ・マーケティングを設立するに至った。

競争は仕かけた者が勝つ

 「お客様をいかにして喜ばせるのか」「どうすれば口コミが発生するのか」──。中島氏は事業開発をする際、意識して事業家というよりは商人(あきんど)としての視点を重視するという。儲からない商売が周囲の人々を不幸にしていく現実を体感してきたことに加え、商売の原点を見失わなければ大きな失敗をすることもないと考えているためだ。

 近く本格的にサービスを開始するアクセス解析サービスは、1年以上研究を重ね、営業利益率4割を確保できるモデルを構築。徹底した高品質低価格を売り物にして展開する。

 「競合他社が月額十数万円で提供するところを月額1万9800円でやる。いずれ価格競争になるサービスは価格競争を仕かけた者が勝つ。分析データをあえてネット経由以外のROMでも提供するのは、利用企業が数百数千になれば各社のマーケティング担当者が直接目にするメディアビジネスにも発展できるためだ。商売になればネットもリアルも関係ない」

 その一方で、IRや資本政策などマーケティングやマネジメントの専門家として上場企業の顧問を務めるという顔も持つ。顧問を依頼する玉上氏は中島氏の仕事ぶりについて、「信じられない集中力で仕事も勉強もする。そういう時の彼はいつ寝ているのかさえ分らない」と舌をまく。同社に投資するある人物も「繊細でつかみどころがない人だが、言ったことは必ずやり遂げてしまう天才」と評する。

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