クアルコムは6月8日、都内で国内の放送・通信関係者らを招き、米国発の携帯端末向け放送サービスMediaFLOの最新動向やビジネスモデルを紹介する「MediaFLO Conference2007」を開催した。
冒頭、挨拶に立ったクアルコムジャパン社長の山田純氏は、今月中にも方針の一部が明らかとなる見通しの2011年以降におけるアナログ空き周波数帯の活用方法について「(MediaFLOに)帯域を割り当てていただけるよう、全社をあげて強く推進していきたい」と抱負を語った。
「MediaFLO」は米クアルコムが開発した携帯電話向け放送技術で、全米各地域で2007年春よりサービスを開始。日本をはじめ世界各国でのサービス提供を目指しており、2011年7月のアナログテレビ放送終了以降に空き帯域となる周波数帯の確保を目指している。
一方、日本国内の放送事業者は「ワンセグ」をはじめとする「国産」放送方式へのこだわりなどから採用に慎重な姿勢を見せており、今回のカンファレンスを通じて放送事業者の協力・理解を得ることもクアルコム側の狙いとなっている。
日本国内でのサービス展開推進を行うために設立されたクアルコム・KDDIの共同出資会社「メディアフロージャパン企画」の社長である増田和彦氏は、日本のワンセグ放送について「最大のキラーコンテンツを要しており、競合のモデルは成立困難」との見通しを示した上で、ビジネス上における関係について「MediaFLOは有料放送であり、連携した上で相互に発展していくことは必須」とした。
「新たな携帯向け放送サービス」について持論を展開したのは、クアルコムからは独立した立場でMediaFLOのサービス性を検討しているソフトバンク系の「モバイルメディア企画」の社長である矢吹雅彦氏。放送実施時の高い効率性から「衛星やケーブルテレビとでは比較にならない安価な多チャンネルサービス提供が可能」と事業性を高く評価し、「2011年まで待つ気はなく、部分的にでも09年ごろから開始していきたい」と目標を語った。
カンファレンスには、本場・米国からもMediaFLOテクノロジ部門ビジネスディベロップメント・バイスプレジデントであるOmar Javaid氏らが参加。日本のワンセグ方式と同端末での対応を可能とする第2世代FLOチップセット「UBM」の開発状況など、最新の技術動向や米国でのサービス状況を紹介した。
ただ、全体を通じて、実際のサービスインに向けた課題となる「多チャンネル実施に向けた優良コンテンツ確保の目処」や「インフラ整備面などにおける国内放送事業者の協力」などに関する直接的な説明は見られなかった。
また、フジテレビを中心とした携帯端末向け放送の研究会「ISDB-Tマルチメディアフォーラム」や2003年10月から実用化試験放送を実施している地上デジタル音声放送(デジタルラジオ)など、周波数獲得のライバルに対するコメントもなく、「MediaFLOの魅力」や「ビジネス性の高さ」強調に終始した。
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