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大手とベンチャー連携の肝は“人” - (page 3)

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勝屋氏:お二人はNILSで出会われたとのことでしたが、普段、志津さんはどうやって投資する案件を探してくるんですか。

志津氏:大きく3つに分かれていて、1つ目はVC、証券会社からの紹介ですね。2つ目はNILSなどの経営者の集まりや、投資先の企業からの紹介です。これはすごく嬉しいことで、やはり投資家として評価された結果として他の会社も紹介していただけるので、ありがたいことだと思ってます。3つ目は総合商社ならではだと思うんですが、営業部署やグループ会社経由で、取り引きしているベンチャー企業を紹介されて投資に至るというケースです。

勝屋氏:投資をすると、一般的にはイグジットして、IPOして、キャピタルゲインを得てという発展がありますが、事業会社の場合はそれだけではないと思います。事業部に対してシナジー効果で売上が上がったり、新しいエリアに対して事業を広げる起爆剤になったり。住友商事さんにとっての良い展開は何でしょうか。

志津氏:やはりお互いに成長できるパートナーとして、長く付き合いできるのがハッピーなことです。我々は投資部隊なので成長の段階で株の売却などを見込むこともありますが、一方では新興市場の後も、二部上場、一部上場とお付き合いしたいと思っています。投資後に追加投資をさせていただくとか、イグジット先が住商になるケースもあるんですよね。バイアウトでそういうケースは出てきていますし。ベンチャーの場合はやりづらいのかもしれませんが、そういう可能性もなくはないと思ってます。

 私自身は、上場もそうですが、事業アライアンスができた時がゾクゾクっとするくらい嬉しいですね。すぐその場で売り上げが大きく上がるというような話は、ベンチャーと商社の場合、規模の違いもあってなかなか難しいですが、情報交換を続けていきながら長いスパンでパートナーになれることが大きいと思います。商社は今現在で大きな市場がないと入りにくいものですが、これから市場ができていくところにエッジの効いたスピード感のあるベンチャー企業が入っていって、そことパートナー関係を結ぶことで一緒に市場を大きくしていくというのが我々にとって一番にハッピーなことですよね。

勝屋氏:投資をする時の基準はなんですか。

志津氏:ビジネスモデルや収益性の評価、市場の成長性、競合優位性、それから投資として見るのでやはりバリエーション、株価も基準となります。ただ、この業界はアーリーステージのベンチャー企業が多いので、やはり経営チームに対する評価が大きいと思います。社長がどんなに素晴らしいビジネスモデルを作ったとしても、それを実現できるチームが作れていないと夢だけで終わってしまいますからね。

 それから、私たちが出資することで、どういう付加価値をもたらすことができるのか、という必然性に関しては社内でもかなり議論になります。お金の関係も確かに大事な要素ですが、それ以上に付加価値をどうつけられるか、という点も稟議を通す上では大事な要素になります。そのあたりの総合判断で投資の基準は決まってきますね。

勝屋氏:中村さんに事業会社との付き合い方でアドバイスをいただけますか。出資してもらうケース、業務提携をするケースなどいろいろあると思いますが。

中村氏:ステージによって違うと思うんですが、本当にアーリーの場合は、自分の製品に価値を生み出せるパートナーを見つけることでしょうね。ある程度伸びてきたらVCなどとの付き合いが始まって、最後に盛り上げる時になったらそれなりの事業会社と付き合うという感じでしょうか。

 そんな3ステップの付き合い方がたぶん良いシナリオだと思います。事業会社に限って言うと、出資と事業提携は違うと思うんです。出資しないとその商品は売らないというような話って、ちょっとヘンですよね。出資関係がなくても良い商品なら売るはずですから。

勝屋氏:VCとの付き合い方、距離感などはどうお考えですか。

中村氏:彼らもチームの一員なので、特に変わらないですね。会社としてどう見ているかは分からないですが、少なくともオブザーバーとして来てくれたり、当社の担当として来てくれる方々は、志津さん同様、チームだと思ってます。

 結局、VCとか何とかは関係なく、人なんだと思います。会社って何だかんだ言っても人で動いているんだと本当に思いますよ。投資しているメンバーが本気でアライドアーキテクツを盛り上げようと思ってくれるかどうかがカギなんです。

勝屋氏:先ほども少しお話の中に出てきましたが、大手の事業会社とベンチャー企業との連携を成功させるポイントというのは何かありますか。

志津氏:やはり事業提携と資本提携を同時に行うのは、大手の事業会社とベンチャー企業の場合、かなり難しいと思います。同時に行えるのが理想ですが、トップレベルでは話ができていたのに実務レベルでは話が食い違ってしまうとか、いろいろ問題が出てくるのが実情だと思います。

 結局、動くのは個人なので、大手の事業会社の中でもそのベンチャー企業を好きになって、社内の稟議を頑張って通してくれるような個人のパートナーと出会えるかどうかがポイントだと思います。その個で繋がった部分をいかに面まで広げていくかが大事なんでしょうね。とくに総合商社の中にいると分かるんですが、本当に多方面で事業展開しているんです。ですから資本提携を達した企業と、当初は想定してなかった事業提携が生まれることもあるんですよね。

中村氏:根本的に得意分野が違いますよね。ベンチャー企業はまだ開発されていない市場を切り開いていくのが得意ですが、当然、そこはまだ市場が小さいです。でも、急成長する可能性も高いんです。一方、大手企業はいきなりそんなところで冒険はせずに、ある程度立証されてからでないと進出しません。

 つまり、ベンチャー企業は先兵隊になれるんです。大手企業はそういったベンチャーに投資しておくことでエッセンスや情報を手に入れ、然るべきタイミングは逃さない。逆にベンチャーはいざ大手が動く時に大きな市場を一緒に手に入れる。そういう連携が美しいかなと思います。

勝屋氏:中村さんはアライドアーキテクツを、今後どういう会社にしていきたいと思ってますか。

中村氏:いろんな人がいろんなアイディアを持っていて、やりたいと思っている人、作りたいと思っている人がいる。そういう人たちが何でもできるプラットフォームを作りたいんです。

 日本人は優秀だけれども安定志向もあって、勇気のある人だけが起業している感じですが、何かやってみたいという人たちにあらゆるインフラを提供して、その中でみんながどんどんクリエイトしていくようなイメージですね。ですから、アライドアーキテクツという場所を使って何かやってみたい人が続々と集まってくるような会社にしたいんです。

 もちろん、その人たちにうまくリターンができるような仕組みは作らないといけないと思いますが、それが21世紀の企業の在り方だと思います。20世紀型の組織というのは、戦争で作られたようなトップが決めて下の兵隊が動くという形だったと思うんです。それは短期決戦には向いてると思いますが、長期の戦いには向いてないですよね。

 これからはあまり人を締め付けず、個人の能力が発揮できるような会社にして、そうすることでクリエイテビィテイを延ばしていければいいと思います。最終的には住商さんにも出資してもらえているので、世界に通じる会社にしていきたいと思いますね。

勝屋氏:志津さんはこの仕事楽しいですか?帰りが遅くなったり、土日も仕事になるケースが多くて。。。

志津氏:実はメチャクチャ楽しいんですよ。(少々照れながら)

勝屋氏:なんか僕と同じだ(笑)

勝屋氏:志津さんの今後の夢は何ですか。

志津氏:まずは投資家として実績と経験を積んでいきたいと思いますが、やはり経営に関わっていく形が多くなると思います。これからは日本も経営者層が増えていって、0から1にするのが得意な人、1を10にするのが得意な人、10を100にするのが得意な人と、各ステージによっていろいろな経営者が出てくると思います。その中で自分も経験を積んで、得意なステージ、得意な分野を見つけていきたいと思います。

対談での氣づき 〜 勝屋 久(IBM Venture Capital Group)

私が経験をとおして感じているコーポレートベンチャーキャピタルの成功要因は、

  • 明確な戦略があること
  • トップマネージメントの強力なコミットメントがあること
  • 適切な人材の配置を行うこと
  • 時間軸を考慮したプロセスマネージメントと評価方法を確立すること
--であるが、特に適切な人材の配置は重要であると思っている。

 アライドアーキテクツの中村さんも今回の取材で発言しているが、大手事業会社とベンチャー企業とのアライアンスの場合、トップとトップが勢いで話をすすめても、現場レベルでうまくいかないことが多々ある。

 熱意ある・誠実な・ビジネスセンスのよい現場担当者の存在が大切だ。社内に人脈もあり、ベンチャー業界などにも顔がきく〜要は多くの人に頼りにされたり、愛されている現場担当者・担当マネージャー。志津由彦さんはまさにそんな存在だ。

 決して見た目は派手ではないが、志津ポートフォリオとかShizu Moneyとかいって彼を中心にITベンチャー業界で輪が着実にひろがっている事実を知ったり、良い評判を聞くと、志津さんの人となりがわかる。

 大手事業会社に志津さんのような方がドンドン増えると大手事業会社とベンチャーの生態系の距離が短くなり、お互い連携がスムーズになり、市場・お客様により良い価値を提供でき、さらには社会もより豊かになると信じている。

 また、人と人が出会う時間と空間は大切ですね。まさに2人を自然な流れで引き合わせたNILS(New Industry Leaders Summit)の存在はとても大きいです。

IBM Venture Capital Group ベンチャーディベロップメントエグゼクティブ日本担当
勝屋 久

1985年上智大学数学科卒。日本IBM入社。2000年よりIBM Venture Capital Groupの設立メンバー(日本代表)として参画。IBM Venture Capital Groupは、IBM Corporationのグローバルチームでルー・ガースナー(前IBM CEO)のInnovation, Growth戦略の1つでマイノリティ投資はせず、ベンチャーキャピタル様との良好なリレーションシップ構築をするユニークなポジションをとる。総務省「情報フロンティア研究会」構成員、経済産業省「Vivid Software Vision研究会」委員、New Industry Leaders Summit(NILS)プランニングメンバー、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「中小ITベンチャー支援事業」のプロジェクトマネージャー(PM)、富山県立大学MOTの講師などを手掛ける。

また、真のビジネスのプロフェッショナル達に会社や組織を超えた繋がりをもつ機会を提供し、IT・コンテンツ産業のイノベーションの促進を目指すとともに、ベンチャー企業を応援するような場や機会を提供する「Venture BEAT Project」を手掛けている。

ブログ:「勝屋久の日々是々

趣味:フラメンコギター、パワーヨガ、Henna(最近はまる)、踊ること(人前で)

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