「単なるEC」からの脱却を--「ZOZOTOWN」のスタートトゥデイが考えていること

インタビュー:鳴海淳義(編集部)、文:加藤さこ2007年05月11日 20時22分

 数年前まで「ITベンチャー企業」といえば、利益追求し、上場して儲けるというイメージが強かった。しかし、急成長に伴うさまざまな問題点も浮かび上がってきている。

 安定した企業に成長させていくための成功の鍵は何なのか。今、若者から圧倒的な支持を得て大きく成長し続けているアパレル系のオンラインショッピングサイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイの代表取締役、前澤友作氏に話を聞いた。

輸入CDのカタログ通販から出発

──まず最初に、スタートトゥデイが歩んできた経緯を聞かせてください。

 1995年に輸入CDの通信販売店として創業しました。そして2000年に、それまで行っていたカタログ通販からオンラインショップに切り替えたのですが、それがオンラインでの1号店になります。そこからスタートし、CDやレコードだけでなく、いろんな自分の好きなものを紹介していきたいという気持ちが高まって、当時自分が好きだったブランドの洋服を扱う2号店をオープンしました。さらに、あんなものもこんなものもという具合に、どんどん広がっていって、2004年末には17店のショップができていました。

 個別に展開していてももったいないから、ひとつに集約して街を作り、いっきにお客さんに「こんな素敵な街があるんだよ」ということを知らせたい。その想いを形にしたのが「ZOZOTOWN」です。

 ZOZOTOWNをオープンした際、ここに集まる人ともっと深くつながり、街をみんなで共有して作り上げていき、世界に良い影響を与えることができるような情報発信源なるというのが、僕らのミッション、そして理念だということに気付いたんです。だから、僕らはZOZOTOWNを「街」と呼んでいて、「EC」や「通販」という言葉は社内では使っていません。

 スタートトゥデイの事業の方向性については、ZOZOTOWNができる前の多店舗化に踏み切ったときに定まりました。リアルショップを持つ場合、2号店を出すというのは勇気の要ることだと思います。その点、オンラインショップは比較的初期コストも抑えられますので多店舗化については積極的に進めました。

──障壁は少なくても、多くのECサイトの中で生き残っていくのは大変だと思います。成功の鍵は何でしたか?

 小売業は、ものを売るというより、心を売ることが大切だと思います。僕は自分が好きなものだけを売ってきた。利益率が良いという理由で商品選択している人より、買ってくれるお客さまに伝えたい想いが強いわけです。これがうまくいった要因だと思っています。

商品販売と広告が利益の柱

──ZOZOTOWNはアパレルを売るサイトとして始まりましたが、現在はどういう方向性でサービスを増やしていますか?

 ZOZOを立ち上げたとき、ECサイトだけでなくいろんなサービスを立ち上げたいという想いいがあり、これからも順次新サービスをリリースしていきます。現在、「ZOZONAVI」ではリアルショップの情報、「ZOZOARIGATO」では社会貢献的なコミュニティサービスを運営しています。そして「ZOZORESIDENCE」は、ZOZOTOWNに集まった人の中からアクティブに利用してくださるお客さまを招待する居住区的な場所となる、SNSサービスとなります。これまでZOZOはECサイトというイメージがありましたが、今後、取り組んでいくサービスはもっと広がっていきます。

──EC以外に収益例を探す試みはされていますか?

 広告商品の開発は、いろいろ検討しています。バナー広告などではなく、ZOZOならではのものになります。第一弾としてコカコーラさまに広告をご出稿いただいたのですが、仮想の店舗を想定し、街に登場させました。企画担当部署のスタッフによる、新しい広告の形になっていると思います。

 ひとつの期間で1社と決めているわけではありませんが、ZOZOの街全体で応援することになるので、結果的には1社になっています。統一した方が見せ方的に訴求力があり、きれいに展開できますから。広告をご出稿いただく企業さまに街全体をジャックしていただくというイメージです。今後、街全体を使ったタイアップ的な広告に取り組んでいきますので、収益はそこからも得られます。

 タイアップについては、現在、多種多様な企業さまから連絡をいただいています。この1年ほどは商品販売売上と広告収益が利益の柱になっていくでしょう。

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