クロスメディアとは、マスメディア販売のロジック?

加藤順彦(株式会社NIKKO 代表取締役社長)2007年04月23日 12時27分
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 このコラムの初回にも書かせていただいたように、インターネットによって生活者と企業とのコミュニケーションが変化し、よりフラットでフェアな関係に変わりました。

 もはや、テレビ以上のメディアインフラにもなったインターネット。多くの企業が自社固有のメディア(最近よく耳にするOWNメディア)であるウェブサイトを持つようになった中で、そこに生活者の耳目や行動を集めるための手段は、弊社の売上の大半を占めるいわゆる「インターネット広告」だけではありません。

 そう!よく見てみると、いま私たちが目にしている「ありとあらゆる広告」には「ウェブサイトへの誘導」が仕掛けられています。

 日本人は、朝起きて夜寝るまでに3000ものプロモーショナルなメッセージを受け取っている(つまり大半は気にも留めていないってことなんですが)という話を聞いたことがあります。

 3000とは言わないまでも、朝開く新聞にも、会社に向かう電車の中でも、昼食に出向く道すがらの看板にも、会社帰りに読む雑誌にも、家族で晩御飯を食べるときに見ているテレビにも、広告が出ています。そしていま、その多くにURLが、検索ボックスが、QRコードが載っているのです。これらは「インターネット広告」ではないウェブサイトへの導線なのです。

 最近では、こういったウェブサイトを軸とした生活者とのコミュニケーションデザインを「ウェブセンタリングマーケティング(WCM)」という呼び方で括ることも増えてきました。

 ある大手広告会社の社内調査によると、なんと、2006年10月のテレビスポットの38%に検索ボックスが入っていたそうです。ほんとかな。だとすると、すごいですね。そーいや「続きはウェブで」って15秒スポットが増えましたよねぇ。

 そして、そういったネットとのメディア横断的なプロモーションプランニングがですね、とみに見受けられるわけです。インターネットの登場によって再定義された従来マスメディアの新しいポジション=ウェブサイトへの導入ともいえるでしょう。

 実はこういった異なるメディア・ビークル(広告が掲載されるもの)の組み合わせ自体は、ネット登場以前の昔から「メディア・ミックス」という呼ばれ方で総称されてきました。

 クロスメディアとメディアミックスの語意の違いについてもよく聞かれるのですが、加藤自身もよくは解りません。植田正也先生は近著「2010年の広告会社」のなかで

 メディアミックスは、ただ必要に応じて色々なメディアを組み合わせて使うだけの方法であるが、クロスメディアは、伝えたいメッセージ内容により、伝えたいターゲットに効果的に届くメディアを組み合わせて使うことである。

と紹介されています。

 うーん、確かにそういう単なる「売らんかな姿勢」のメディア種別横断のバラエティパックが従来よく言われてきたメディアミックスで、ここでおっしゃられている「ターゲットに効果的に届く」メディアの組み合わせがクロスメディアなのだ!と分けられている方が多いようなので、そういう解釈が正しいのでしょうね。

 実は植田先生は続けて、こんなことも著されています。

 前者(※メディアミックス)が、広告会社の都合で予算を目一杯使い切ろうという考えに対して、後者(※クロスメディア)は広告主の都合、意図を十二分に満足させる効果を上げることを目的として使う方法である、と言ったら広告会社の非難を受けるだろうか。実際、バブル期の延長発想で、広告会社の売上げアップを計る巧妙な広告費拡大計画と言われても仕方のないメディアミックスプランが横行している。(※)は加藤による脚注

 うーん、まったくです。

 だから、しつこいですが重要なのは やっぱりアイデア。インサイト(生活者の本音)に基づくメッセージが、どんなコミュニケーションを必要としているかの企画が肝であり、メディアは接触の手段でしかありません。

 隕石によってコミュニケーションが変化したことで、企業が生活者に情報を伝える際に、従来マスメディアの広告も含め遍くクロスメディア・ビークルが導火線となって、ウェブサイト(企業自身のOWNメディア)という明確な目的地へ繋ぐプロセスが出来たのです。アイデアを見出し、その表現を通じてインサイト衝くことで「ピン」とくる人=共感を得た人に、ウェブサイトで詳しく伝えるというコミュニケーションの流れへとシフトしたのですよ。

 つまり、広告主がウェブサイトで生活者とどんなコミュニケーションをとりたいのか、生活者にどんな気持ちでウェブサイトに来てもらいたいのか、がプランニングの幹にあるかないかが、従来メディアミックスと最近流行語のクロスメディアの違いでしょう!。

 そして、広告主は、ウェブサイトにどんなコンテンツを用意しておくかが非常に重要になってきています。全部集まってくるわけですから。そこから一緒に考えることのできる広告会社でなくてはクロスメディアとかいっても意味がない。……て、きっぱり言いすぎかな。

加藤順彦
株式会社NIKKO 代表取締役社長

1967年4月7日生まれ、大阪府出身。関西学院大学商学部在学中の1986年に株式会社リョーマ設立に参加し、学生起業を興す。1991年同大学卒業後、株式会社徳間インテリジェンスネットワークに勤務。1992年に雑誌媒体専門の広告会社、日広(現NIKKO)を設立。1996年からインターネット広告の取り扱いを開始、ウェブサイトを軸としたインタラクティブマーケティングに強みを持つ総合広告会社へと発展。日本広告業協会 インタラクティブメディア研究小委員会委員、日経広告研究所 デジタル放送広告研究会委員。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加