広告ビジネスは有史以来の「幸せでフェアな関係」へ

加藤順彦(株式会社NIKKO 代表取締役社長)2007年02月27日 08時00分

 インタラクティブマーケティングを強みとする広告会社、株式会社NIKKOの加藤順彦です。縁あってこれよりしばらくコラムを書かせていただくことに相成りました。それなりに読み応えのあるものを記して参る所存です。何卒よろしくお願いいたします。

 さて、かれこれこの10年の間に、インターネット(以下ネット)は企業と消費者との関係を変え、広告の方法論を変え、広告ビジネスの枠組みを変えてきました。ネットによって、広告そのものの次元が大きく変わり、有史以来、企業と生活者がもっともフェアな時代になったなぁと思っています。

 ネットはユーザー(生活者)に「パワー」を与えたわけです。

 ユーザーは、欲しい情報を得る、意見を共有し、発信できる「パワー」を得ました。ネット登場以前はネガティブな所感も、あるいは喜びの声も、すごく身近なところにしか届きませんでした。もしくは個人が発信していたとしても容易に黙殺されることもあったわけです。

 それが、今ではネット経由で生活者同士の情報交換内容が、二次曲線的に読者を集中させ、報道メディアと同じ規模のアクセスを集めたり、その執筆者自体のパーソナリティが一定の価値観の集団には絶大な信頼を得たりするケースも起こってきました。そんな発言力自体が、世の中をより正しく事実を把握しよう、判断しようとする動きにもつながっていることは間違いないでしょう。

 企業へのフィードバックは、プラスにもマイナスにも働く可能性がありますが、いずれの場合もいまや多数の生活者の「パワー」を抑えることができなくなったことは、非常に大きいことだと思います。つまり企業は嘘をつけなくなってしまった。事実に向き合って誠実に競争することこそがマストな土壌になったのです。

 ネットの活用は、企業にとっても“良好なコミュニケーションを明確なターゲットと育める”術となりました。きっと似合う、きっと喜んでもらえるぴったりのターゲットだけを呼び込み、さらに理解してもらう仕組みです。

 ネットは企業にも「知恵と術」を与えたわけです。

 従来ですと、企業が生活者にメッセージを伝える場合、メディア・ビークル(個別媒体)の広告スペースを利用するのが普通だったわけです。どちらかというと商品・サービスの説明に必死だったクリエイティブが、ネットという次の接点が現れたことで、もっと感受性豊かなものになりつつあります。「ピン」とくる人=共感を得た人に、ウェブサイトで詳しく伝えるというコミュニケーションの流れにシフトしてきたからです。ネットがあらわれて、新製品の情報も、イベントの告知も、問い合わせの受け付けも、すべてウェブサイト(しかも自社のウェブサイト)でできるようになりました。

 では、既存のメディアが不要なのかといえば、もちろんそうではありません。既存メディアの役割もまた進化してると思います。ネットが普及したことで、広告商品・サービスを心から満足してもらえるターゲット、ふさわしい見込み客をいかに集め、どのようにブランドを感じてもらうかを巧みに企画できるようになったんですね。そもそも、まったくターゲットではない生活者が、自社のウェブサイトを見に来ても共感は得られないし、自社の商品を購入したとしても、そもそも「不満」につながるだけですし。

 いわば、見る人にとって「これが私にとって有用な情報」と思わせることが広告の仕事であり、Relevance(共感・親和性)の重要さが増しているといえるでしょう。将来的に、既存メディアの70%がデジタル化し、メディアの融合も進んでいくと言われています。当然、メッセージの伝達方法も大きく変わっていくでしょう。

  • インターネットがもたらした、企業と生活者の「フェアな関係」
  • 企業と生活者が相互に満足できる「幸せな関係」

 この「幸せな関係」を仕掛けることが、新しい時代に必要とされる広告会社の仕事ではないか! と考えているわけです。

 次回は、インターネットを中心とした昨今の広告構造変化・手法の変化について言及したいと思ってます。

加藤順彦
株式会社NIKKO 代表取締役社長

1967年4月7日生まれ、大阪府出身。関西学院大学商学部在学中の1986年に株式会社リョーマ設立に参加し、学生起業を興す。1991年同大学卒業後、株式会社徳間インテリジェンスネットワークに勤務。1992年に雑誌媒体専門の広告会社、日広(現NIKKO)を設立。1996年からインターネット広告の取り扱いを開始、ウェブサイトを軸としたインタラクティブマーケティングに強みを持つ総合広告会社へと発展。日本広告業協会 インタラクティブメディア研究小委員会委員、日経広告研究所 デジタル放送広告研究会委員。

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