第2回:「インフラ事業者」と「いち私企業の論理」は両立するのか

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 「彼とは毎週のようにランチをともにする仲なので、かなりの情報が事前に入ってきます」

 いまから3年ほど前の2004年、都内某ホテル。携帯電話の業界関係者が数人集まった席で、ある有名携帯電話コンテンツプロバイダ(CP)の戦略立案担当者は、得意げにこう語った。

 「彼」を指す携帯電話キャリア幹部との「親密な関係」を打ち出すことは、「急成長市場の携帯電話コンテンツでビジネスをしたいが、その方法が分からない」と悩む事業者にとって、きわめて魅力的に映る言葉であると知っているためだ。実際、こうした悩みを抱える事業者は少なくない。

 しかしこのことは逆に、携帯電話のコンテンツビジネスは、一部の人にしか知りえない情報の所有者に、業界全体が牛耳られてきたことを意味する。

公式サイトの掲載基準は「暗黙知」

 ディー・エヌ・エーが運営する「モバゲータウン」の躍進などで沸き立つ携帯電話コンテンツビジネス。しかし、依然として「その主戦場は公式サイト(キャリアが運営するポータルサイト)」(通販業界関係者)だ。実際、一般サイトから公式サイトに転じて「会員獲得数が数十倍に跳ね上がった」(大手通販企業)との証言もある。

 たとえばNTTドコモの場合、4700万人のiモード利用者が数回のクリックですぐに訪問できる公式サイトと、利用者が明確な意思を持ってキーワード検索などを駆使しながら到達しなくてはならない一般サイトとでは、その「距離感」に歴然とした差がある。

 しかし、ドコモの公式サイトに入るのは容易なことではない。明文化された基準が少なく、キャリアと一部のCPにしか分からない「暗黙知」となった情報が極めて多いからだ。

 3キャリアで公式サイトを営むCP関係者は、キャリアの公式サイト審査について次のように説明する。

 「CPが持ち込む企画を審査する人員は、ドコモ中央だけで約50人、そのほか各地域会社合計で120〜130人ほどいる。持ち込まれた企画書は月例の『全国会議』で審査され、審査に通らなかった企画書は翌月の再審査を待たなければならない。さらに全国会議の審査を受けるにはまず、ドコモの窓口担当者による審査が必要。企画意図はもちろん、企画書にはサイトの画面遷移も細大漏らさず記入しなくてはならないため、必然的にボリュームは増し、100ページ以上になるのが普通だ。auとソフトバンクは比較的敷居は低いが、何も知らない人にとって、ドコモのハードルはかなり高い」

 公式サイトに入るための基準についても分かりづらい。いくつもの公式サイトの審査を経験してきたCP関係者でも、「審査基準はよく分からなかった」と明かす。ドコモが公開している「iメニューサイト(ドコモの公式サイト)掲載基準」に抵触しなければよいということではなく、「結局は、担当者により基準が異なり、明確な基準はない」と多くのCPは語る。

 こうした複雑な企画審査の仕組みと基準の曖昧さは、結果として、公式サイトへの新規参入業者のハードルを相対的に高くしている。人気のある公式サイトを多数運営するCPの場合は、ドコモ側も同じ担当者が継続して窓口となる傾向にある。そのため、「担当者の癖を知っているCP」が結果的に、公式サイトに参入する上でますます有利になる構造だと言える。

いつの間にか解禁されていたコミュニティサービス

 NTTドコモの公式サイト掲載基準は、以前から情報開示の点で「後ろ向き」と批判を浴びてきた。「ドコモは公式サイトの掲載基準を情報公開すべき」との声に応えて、同社がiメニューサイト掲載基準を初めて公開したのは、iモードの登場後、2年も経過してからの2001年3月。当初は「出会いに関するコンテンツは禁止」とされていた。当時は出会い系サイトが元となる犯罪が社会問題化していた頃であり、こうした運営ポリシーからも「ドコモの公式サイトは安全」と一定の評価を得ていたのは事実だ。

 ところがこの規約は、SNSやCGC(Consumer Generated Contents)の流行を受けてか、2006年11月20日に変更され、「チャット・掲示板等、コンテンツのサービス利用者間でのコミュニティの形成を目的とするサービスについては(中略)トラブルが発生しないよう、適切に運営すること」と、事実上コミュニティサービスが解禁。規約の変更後、突如、ドコモは2007年2月に公式サイト内で「SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)」というカテゴリーを新設し、「mixiモバイル」と「GREE」を加えて携帯業界関係者を驚かせた。

 ドコモでは、こうした運営ポリシーの変更についても、同掲載基準で「iモードユーザーのニーズ、社会情勢、iモードを取り巻く環境などの変化、ドコモのiモードメニュー運営方針の変更などをふまえて、変更することがあります」とし、告知なく変更可能としている。しかし、携帯電話ビジネスを展開する上で、影響力が大きい公式サイトの重要な変更点を、広く一般に告知する責任はなかったのだろうかという疑問は拭いきれない。

 もっと言うと、「mixiモバイル」と「GREE」は本当にiメニューサイト掲載基準に合致し、他者への中傷や個人情報漏洩が本当に起こらないと言い切れるのか。どのようにコミュニティを運営すれば「適切に運営」と見なされるのか──。依然として、その判断基準は明確ではない。

 これについてドコモは、「iメニュー掲載基準は、明文化できない細かい基準についても個別の企画持ち込み時ごとに対応している。たとえばギャンブル系コンテンツなどについては、以前は禁止だったが、現在は許容しているなど、時期によっても基準は異なる。CP側から見れば、審査が緩くなったという印象を与えていることはあるかもしれない」とコメントしている。

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