サンフランシスコ発--フリーランスのジャーナリストでビデオブロガーのJosh Wolf氏(24歳)は米国時間4月3日、同氏が召還を命じられるきっかけとなったビデオ映像の公開に同意し、釈放された。米国史上最も長く収監されたジャーナリストとなったWolf氏は、自分の釈放をジャーナリストの勝利だと述べた。
Wolf氏はカリフォルニア州ダブリンにある連邦刑務所から釈放され、3日夜にはサンフランシスコ市庁舎前の階段で記者会見を開いた。同氏は法廷侮辱罪に問われ、226日間にわたって身柄を拘束されていた。
Wolf氏は、集まった少数のメディアと支持者の前で、用意した声明を読み上げた。その中で同氏は、1972年に連邦政府対Caldwell氏事件(ジャーナリストへの証言の強要に関する訴訟)における、ある裁判官の少数意見を引用して、次のように述べた。「年を経るごとに、政府の権力はますます拡大している。これは、市民と正義の息の根を止める力だ。権力を持つ者は、その政治姿勢を問わず、ひたすら権力の維持を欲する。ジャーナリストを守る法律と慣習の防壁が破られた今、犠牲者となるのは市民だ。わたしの解釈では、(言論の自由を保障する)米国憲法修正第1条は、まさにこのような悲劇を防ぐために作られたはずだ」
Wolf氏は、2005年7月8日にサンフランシスコで無政府主義者の抗議行動をビデオに撮影したが、そのビデオの提出を拒否したため、2006年に法廷侮辱罪に問われて収監された。同氏が3日に釈放されたのは、ビデオの内容に関して大陪審の前で証言することを強制されないという条件で、未編集ビデオをブログに公開することに同意した後のことだった。同氏はこの結果を自らの勝利だと考えている。
Wolf氏はまた、検察当局から求められた2つの質問に回答することにも同意したが、それは質問の具体的内容を確認した後だったと、同氏は強調した。その質問とは、1問目が抗議行動中に警察車両に物を投げつけた人物の身元を知っているか、2問目が抗議行動中に負傷した警官、Pete Shields氏が追いかけていた人物を特定できるか、という内容だった。Wolf氏は、どちらの質問にも「わからない」と答えたという。また、質問に答えることに同意したのは、「この質問に答えても、新しく明らかになることは何もなかった」からだったと説明した。
検察当局の質問に答えたことについて「自分自身の選択であり、適切な判断だと考えている」とWolf氏は述べた。
検察当局は将来再びWolf氏を召還する権利を持っているが、おそらくそうしたことは起きないだろうとWolf氏は言う。
「政府が(そのようなことを)するとは思わない。ここにはたくさんのメディアが集まっている。(中略)政府は(再び)メディアの注目を集めるような事態を招きたくはないはずだ」(Wolf氏)
Wolf氏に証言させるために検察当局が身柄拘束という行動を採ったのは、Wolf氏が大手マスコミに所属するジャーナリストではなく、ブロガーだったからだ。
連邦検察局により提訴された今回の件について、Wolf氏は、抗議行動中にサンフランシスコ市警の車両に放火した人物を特定することだけが目的なのでなく、「見苦しい政治的キャンペーン」だと批判した。
しかし、Wolf氏は、連邦刑務所内で受けた待遇については賞賛した。守衛たちは自分を「人間らしく」扱ったと言う同氏は、刑務所を「寮監がいる大学寮」のようだったと表現して聴衆の笑いを誘った。
記者会見を通して、Wolf氏はリラックスし、上機嫌な様子だったが、刑務所にとらわれの身になった人たちが外界からいかに遮断されているかについて語るときには、感情的になった。
「投獄されれば、あなたの声は遮断される」と、Wolf氏は声を詰まらせながら語った。この経験から、同氏は「PrisonBlogs.net」を立ち上げた。これは「昔ながらのピア・ツー・ピア(PtoP)型のファイル共有と同じ考え方」だが、音楽やビデオではなく、囚人の手紙を共有するブログだという。
Wolf氏はまた、ジャーナリストの取材源秘匿を保障する連邦法(シールド法)の制定に向けて取り組むことも明らかにした。メディアの自由を守る活動をしているウェブサイト「mediafreedoms.net」で、「報道の自由を守るための連携」を始める計画だ。
自由の身になった今後は何をするつもりかと尋ねられたWolf氏は、「ジャーナリズムの世界で活動を再開する」ことを楽しみにしていると答えた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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