数あるゲームタイトルの中で、「PLAYSTATION 3(PS3)」向けゲームソフト「メタルギア ソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット(MGS4)」ほど大きな話題になり期待されているものはない。だから、オーストラリアのパースで現地時間3月30日〜4月1日に開催された「GO3 Electronic Entertainment Expo 2007」で、ゲームクリエーターの小島秀夫氏の講演にもっとも多くの聴衆が集まったのも当然だった。新しい予告映像が公開されたり、ゲームプレーの具体的細部が語られたりすることはなかったが、小島氏は、この名高いステルスゲームシリーズに新たに導入した、特定のシチュエーションのなかで敵から隠れながら任務を遂行するというメインテーマについてたっぷりと語った。
オーストラリアは初めてという小島氏は、Perth Convention and Exhibition Centreの大ホールを3分の2ほども埋めた200人強の聴衆に向けて、「オーストラリアに来て少し時間がたったが、驚いたことにまだ1頭のカンガルーも見ていない。映画『マッドマックス』に出てくるようなクレージーなバイク乗りにも会っていない」とまず英語で口を切った。軽いジョークを交えた導入の後、小島氏は母国語である日本語に戻り、それからの1時間におよぶ講演の大半を費やして、同氏の代表作であるメタルギアシリーズの歴史やコンセプトについて話をした。
まず小島氏は、1987年に第1作目の「メタルギア」をリリースしたときから話しはじめた。最初のメタルギアは、MSX2版の2次元描写のゲームだった。小島氏は、同氏オリジナルのゲームコンセプトである、特定のエリアや場所で敵から隠れながら任務を遂行するというコンセプトが、この20年間のメタルギアシリーズに登場したさまざまなバージョンを通じて、どのように進化してきたかに触れ、新作が出るたびごとに新しい要素を取り入れるよう懸命に努力してきたと述べた。だがMGS4になると、ゲームの舞台となる場所のコンセプトが出尽くしてしまい、まったく新しいアイデアを生みだす必要があったと、小島氏は言う。
小島氏は通訳を介してこう語った。「最初に立ち返り、ゼロから、メタルギアの1と2、さらに、メタルギア ソリッドの1から3まででやったことを見直した。もう主人公のスネークにステルス任務を行わせる場所を作ってやれず、どういう場所を舞台にすればいいか考えあぐねてしまった。それで、場所ではなく状況を作り出したらいいのではないかと考えたわけだ。それから、スネークが忍び込まなければならないシチュエーションとして、戦闘地帯を思いついた。こういうわけで、MGS4のゲームコンセプトは、特定の状況の中で敵から隠れながら任務を遂行するというものになった」
小島氏は、MGS4では敵対関係にある2つの軍隊がいる戦闘地帯、つまり老練な諜報部員が十分に能力を発揮できそうな状況に、スネークを置くことになるだろうと話す。
「要するに、これまでのメタルギアシリーズでは、スネークは敵ばかりがいる環境に忍び込んだ。スネーク以外はみんな敵だった。今回は戦闘地帯に入っていくのであって、そこにはAとBの2つの国があり、スネークはどちらの国とも関わり合いを持てる。つまり、周囲にいる全員が必ず敵ということにはならない。これにより、この新しいステルスアクションに新しい緊張感が生じる」(小島氏)
小島氏はさらに、PS3の処理能力が強化されているので、グラフィックスの向上はもちろん、「心理的」要素の導入にも役立てられるという、漠然としたヒントも明かした。
「PS3のCPU能力を限界まで引き出して、目に見えるものだけでなく、ゲームプレーそのものに影響する心理的効果、すなわち心理戦も描き出したい」と小島氏は言う。
小島氏は講演の締めくくりとして、よりよいゲームソフトを作り続けるためには、ハードウェアであるゲーム機の進化にあわせて、ゲーム開発者がさまざまな業界の専門家と密接に協力する必要が出てくると論じた。
「ゲームのハードウェアが進化し、次々と進んだ技術が登場するにつれ、徐々にほかの業界の専門家たちとの共同作業が必要になっていくだろう。われわれは将来、医師、心理学者、さまざまなアーティスト、さらにはおそらく科学者とも、ともに仕事を進めることができるようになるだろう」と小島氏は言う。
「ゲームのデザインはテクノロジとともに進化する。そして、テクノロジの進化に終わりはない。したがって、ゲームのデザインも進化しつづけるだろう。進化がとどまることはない。同時に、多くの人々が力を合わせることで、ゲームは共同芸術でありつづける。私はこのコンセプトが正しいことを確信している」(小島氏)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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