ゲームデザイナーW・ライト氏が語る「SPORE」とストーリーテリング

文:Daniel Terdiman(CNET News.com) 翻訳校正:向井朋子、小林理子2007年03月22日 17時23分

 テキサス州オースティン発--伝説的なゲームデザイナーのWill Wright氏は、世界は出来事の因果連鎖を生み出しながら多くの物事が次から次へと流れていくシミュレーションのようなものだと見ている。

 Electronic Arts(EA)の「The Sims」、「SimCity」、そしてリリースを控えた「SPORE」などのゲームデザイナーであるWright氏は米国時間3月13日、当地で開催された「South by Southwest(SXSW)Interactive」の基調講演で、「ストーリーとは、じつのところ、1つの因果連鎖をたどることであり、それを見る人たちに提示することだ」と述べている。1時間の講演でWright氏は、コーヒーをエネルギー源にしながら、インタラクティブなストーリーの進め方に関して、熱をこめて独自の考えを詳しく語った。

 Wright氏は講演の後半でSPOREの新たなデモを行った。2年ほど前にEAがデモをしたバージョンと同様ではあるが、はるかに磨きがかかり、グラフィックスが進化し、ゲーム体験も多少発展しているようだ。

 Wright氏は、いつものとおり、「SPORE Creature Editor」のデモを見せた。SPORE Creature Editorを使えば、プレーヤーは空想の小さな生物たちをほんのわずかの間に作成できる。Wright氏が特に気に入っているところは、生みだした新しい生き物にあっという間に彩色できる点だ。

 「われわれはテクスチャーアーティストが数日かけて行うことを、数百ミリ秒の単位にまで短縮した」と、Wright氏は新しく作成したSPOREの生物に自動で色をつけながら語った。

 リリース予定が2007年後半になっているSPOREだが、Wright氏の説明によれば、同氏やSPOREにかかわる仲間たちにとって、このゲームは非常に精巧なモンテッソーリの知育玩具のようなものだという。SPOREがその基礎に「Powers of 10」や「SETI@home」の科学理論を置いており、しかもゲームの設計自体、何がゲーム世界をより興味深いものにするかを予測しながら進むように作られている面があることから、これは実際、精巧にできた哲学ツールなのだとWright氏は言う。

 「ゲームから離れているとき、プレーヤーは人生の意味について考える。どうしてこうなったのだろう?というふうに」と同氏は述べた。

 Wright氏はまた、SPOREのなかに作りあげられた社会が、どれほど短い間に人間と同じような行動をとるようになるかも披露した。

 たとえば同氏は、生物が集まっている地区に石柱を1つ置き、それをどういうふうに宗教的な偶像に作りあげてゆくかを示した。するとまもなく、その地域の生物が石柱に向かって礼拝するようになった。

 Wright氏は、デモの最後にSPOREの追加機能を披露した。今回初めて公開された機能もいくつかあったが、その1つである「cloud ray」は気候を変える機能で、惑星の1地域の気温を急激に上昇させ、海の面積を縮小させ、ついには消滅させてしまう。

 Wright氏は「cloud ray」を使って惑星を溶かしながら、SPOREは、元米国副大統領Al Gore氏のドキュメンタリー映画「不都合な真実」の続編とも言えるかもしれないとジョークを言った。

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