音楽出版社業界もXM Satellite Radioを著作権侵害で提訴

文:Anne Broache(CNET News.com) 翻訳校正:吉武稔夫、長谷睦2007年03月23日 20時44分

 全米音楽出版社協会(NMPA)は米国時間3月22日、衛星ラジオ局のXM Satellite Radioが人気の楽曲に対する「広範な著作権侵害」をやめなかったとして、訴訟を起こした。

 NMPAは、ニューヨーク連邦裁判所に提出した訴状の中で、XMのサービス「XM + MP3」は著作権に関連した法律の抜け道を悪用するものだと訴えた。このサービスを利用した場合、XMのリスナーはパイオニアのプレーヤー「inno」などの機器を介して、放送している楽曲の恒久的な複製を許可なく作成でき、音楽の制作者に適切な対価も支払われていないと、NMPAでは主張している。

 この訴訟で主任弁護士を務めるDebra Wong Yang氏は声明の中で、このサービスは「広範かつ意図的な著作権侵害であり、著作権所有者、合法的なオンライン音楽サービス業者、そして最終的には消費者に莫大な損害を与えている」と述べている。

 ニューヨーク地裁は1月19日、レコード会社による同様の提訴を認める判決を下している。NMPAの提訴はこの動きに続くものだ。1月の時点でXM側は、1992年に制定されたオーディオ家庭録音法(Audio Home Recording Act:AHRA)のもとで、リスナーはラジオで流れた楽曲を個人使用目的で録音することが法的に認められていると主張した。

 これまで、複数の連邦裁判所は、一定の目的において、ユーザーが通常のラジオ放送で流れる楽曲を録音する権利を認めてきた。これに対し音楽業界側は、XMが販売している「iPodに類似した」機器を利用したサービスは、Appleの「iTunes Store」のような音楽ダウンロードサービスに近く、著作権についても通常のラジオとは異なる枠組みが適用されると主張し、さらに著作権使用料を支払わずにミュージシャンを欺いてきたとして、XMを非難した。

 NMPA会長のDavid Israelite氏は今回の法的措置について、音楽制作者に対する補償について両者が数カ月間議論した末の「最後の手段」だと述べた。

 一方、XMの広報を担当しているChance Patterson氏は、この訴訟を「現在も継続中のビジネス上の話し合いを有利に進めるための交渉戦術」だと一蹴した。

 同氏は電子メールで送付した声明の中で次のように述べている。「XMならびにXM + MP3プレーヤーの製造各社は、作詞者と作曲者に著作権使用料を支払っている。われわれは、この訴訟が無意味であり、当方が勝利すると確信している」

 音楽出版社側は、著作権侵害とみなしたXMの行為に対し、禁止命令を要求している。さらに、XMによって著作権が侵害されたとする作品について、1曲あたり最大で15万ドルの賠償金を請求している。訴状には、「Let it Be」「Like A Prayer」「That's the Way (I Like It)」など175曲以上の有名な楽曲が並んでおり、大小さまざまな多数の音楽出版社が、こうした曲の権利を保有している。訴状に記載した曲は、XM + MP3サービスを通じて不正に配布された曲の数からすると「氷山の一角」にすぎない、とNMPA側は主張している。

 一方、米レコード業界の支持を受けて米議会で審議中のいわゆる「Perform Act」も、論議を呼んでいる。この法案は、衛星およびインターネットを使ったラジオサービスに対し、リスナーによる楽曲の録音、再生に制限を設けることを義務づけるものだ。この法案はDianne Feinstein上院議員(民主党、カリフォルニア州選出)が1月に再提出したもので、衛星およびインターネットラジオが著作権で保護された楽曲の使用に対して確実に「正当な市場価格」を支払うよう定めた法律だとうたわれている。しかし、消費者団体やエレクトロニクス業界などは、リスナーが家庭内で録音する権利を不当に制限するものだと主張して、この法案に批判的な姿勢を見せている。

 XMはSirius Satellite Radioとの合併に合意しており、規制当局の承認を求めているところだ。合併後の企業価値は推定130億ドルにのぼるが、今回の訴訟が合併に向けて新たな障害となる可能性がある。先ごろ開催されたこの合併に関する連邦議会の聴聞会でも、著作権に対する取り組みが両社で異なると言われているが、合併後の新会社はこの問題をどのように調整するのか、と質問する議員もいた。

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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