「DRM(権利管理技術)は必要悪といったスティーブ・ジョブズ氏のiTunesだって、DRM技術に依存している。人々はDRM技術が不要なのではなく、DRM技術が使いづらいから困っているだけだ。DRMがユーザーに負担をかけずに使いやすいもので、メーカーを問わずに互換性があればそれが一番いい」――Macrovisionアジア太平洋担当上級副社長のデビッド・ローリー氏は3月15日に開催された国内初の事業戦略説明会の後、CNET Japanにこう語った。
Macrovisionといえば、DVDやビデオのコピーガード機能を実現するマクロヴィジョン信号で有名な会社だ。同社の創業は1983年。ローリー氏は「我々はDRMという言葉が誕生する前からDRMの技術を提供してきた」と語る。日本オフィスもオープン12年目を迎える。
同社のミッションは「デジタルプロダクトをあらゆるチャンネルを通して、保護し、強化し、流通させ、収益を最大限にすることを可能にする」こと。最近では、パソコン用ソフトウェアのインストール時に現れる「InstallShield」の会社なども買収している。
そのMacrovisionが現在、もっとも注目しているのが、デジタルホームエンターテイメント市場。日本法人であるマクロヴィジョン ジャパン アン アジアのビジネス・デベロップメント担当シニアディレクター、出口雄一郎氏は、ハードディスクに保存されているメディアはどんどん増えていて、2006年には71%の写真がデジタルになるといったデータを紹介した上で、「家庭内のパソコン同士はネットワーク化されているが、家電はまだネットワーク化されていない」と指摘する。
ただし現在、DLNAなどの家電ネットワーク技術に対応した製品は、実験段階からマニア層向け商品のフェーズを経て、「アーリーマジョリティーを獲得するステージに入りつつある」とのことだ。
マクロヴィジョンは、この市場の成長に目を付け、2006年1月に家電をネットワーク接続するためのミドルウェアを開発するMediabolicを買収している。出口氏もMediabolicの出身だ。
マクロヴィジョンは、世界のリビングルーム市場でも主導的地位にある日本の家電メーカーやネットワーク機器メーカーに、同社の持つDLNAを中心としたソリューションを積極的に販売する考えだ。具体的には家電メーカーや半導体メーカー向けに、「ソース・コードSDK」「プロダクトソリューション」「ファームウェア・アップデート・サービス」の3つの商品を提供していく。
ソース・コードSDKはLinuxやNucleus、TRONといった複数のOSに対応したミドルウェアだ。Linux用として利用されるケースがもっとも多いが、製品として一番数がでているのはWindows上のインプリメンテーションだという。
プロダクトソリューションはソフトとチップ、インテグレーター(ソフトのカスタマイズ)、ODM(設計・量産)などをセットにした商品で、テレビやセットトップボックス、オーディオプレーヤーに簡単にネットワーク機能を付け加えたいメーカー用に提供しているものだ。
そして、ファームウェア・アップデート・サービスは、製品のメンテナンスに必要なアップデートを、メーカーの手を煩わせることなく提供するサービスである。
これらは、基本的にこれまでMediabolicが提供していた商品と変わりがないが、Macrovisionが買収したことで、「これまでのMediabolicに欠けていた、商品サポートや営業といった部分を強化できた」とローリー氏は語っている。
なお、冒頭のiTunesのDRMについて、ローリー氏にさらに詳しく聞いてみると、ローリー氏自身もiTunesユーザーで、AppleのFairPlayの使い勝手の良さは評価していることがわかった。
「世の中に100%完全なDRMは存在しない。どんなに複雑な保護をしたところで、ハードコアのハッカーは必ず、それを破ってくるもの。それを防ごうとして使い勝手を損なうのは本末転倒だ。ただし、FairPlayはiPodでしか使えないというアプローチは間違っている。Windows MediaのDRMも、ある程度の相互互換性はあるが、完全にオープンではなく、ユーザーの利便性を損なっている。一度コンテンツを買ったら、それをどこでも使いたいと思うのがユーザーの心情。我々は、使いやすさと、相互互換性に注力をしていきたい」(ローリー氏)
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