何カ月も前から期待の高まっていたMicrosoftの企業顧客向けVoIPソフトウェアのベータ版がまもなくリリースされる。企業通信の進化において重要なステップとなる出来事だ。
Microsoftは米国時間3月7日午前、「Office Communications Server 2007」および「Office Communicator 2007」のパブリックベータ版をリリースすると発表した。これにより、待望のIPテレフォニー機能がついに披露されることになる。Office Communications ServerはMicrosoftのVoIPおよび統合通信サーバ、Office Communicatorは統合通信クライアントで、これらのベータ版は3月中にはテスター向けにリリースされる予定だ。
この発表は、MicrosoftのBusiness Division担当プレジデントのJeff Raikes氏が、フロリダ州オーランドで開催されている「VoiceCon Spring 2007」の基調講演の中で行った。
今回の新VoIPソフトウェアのリリースにより、Microsoftは大企業向けにIPテレフォニーおよび統合通信ソフトウェアを販売する競合他社と肩を並べたことになる。Microsoftが、世界中のほとんどの企業にとって、最大のデスクトップソフトウェア供給元であることを考えると、Avayaのような既存のテレフォニー企業だけでなく、長年提携関係にあり、最近では競合する立場にあるCisco Systemsにとっても、Microsoftは恐るべき競争相手となりそうだ。
Yankee GroupのアナリストZeus Kerravala氏は、次のように述べている。「Microsoftは、Microsoftであるゆえに、この市場に与える影響は大きいだろう。Microsoftは、顧客の獲得において、アプリケーションおよびデスクトップ分野における自社の影響力も利用できる」
しかし、Microsoftが企業向けテレフォニー市場に参入するということは、競合企業がひしめく市場に新たな1社が加わること以上に、通信市場にとって新たな時代の到来を意味する。音声サービスが「Microsoft Office」アプリケーションと結びつけば、テレフォニーはソフトウェア内の機能と位置づけられる。そうなれば、テレフォニー機能しか持たないスタンドアロン製品の場合とは違い、購入や導入、管理に専用のハードウェアや技術者を用意する必要もなくなる。
通信機能は今後、多種多様なビジネスアプリケーションだけでなく、Wikiやブログ、ポッドキャストといった他のアプリケーションの多くにも組み込まれるようになるだろうと、Kerravala氏は予測する。
「テレフォニーが単独製品でなくなれば、Web 2.0技術の一部と統合する余地は大いにある。Microsoftは、まだこの分野に取り組んではいないが、目指しているのはそういうもののようだ。電話をかけたり、メッセージを送ったりするのにアプリケーションを切り換える必要もなくなるはずだ」(Kerravala氏)
最近のインタビューでも、MicrosoftのRaikes氏は、ソフトウェアベースのIPテレフォニーは、双方向通信のコスト削減および効率化を実現し、企業通信に革命をもたらす可能性があると述べている。
「音声を含む統合通信環境が、生産性スイートをはじめとする一連のビジネスアプリケーションのインフラに統合された時、これまでユーザーがまったく活用できていなかった、新しく、大きな価値が、にわかに開けてくる」(Raikes氏)
Microsoftが最初にVoIPのソフトウェアへの組み込みを発表したのは2006年の夏だ。この時、同社は「Live Communications Server」にテレフォニー機能を導入するとしていた。同社はその後まもなく、長い実績を持つ通信機器大手のNortel Networksとの提携を発表した。企業顧客に対して毎日利用するビジネスアプリケーションに通信機能を統合したデスクトップソフトウェアを提供するだけでなく、インフラ機器や通話信号を送信するソフトウェアを含む、完全なソリューションを提供することが、この提携の狙いだ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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