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ベンチャースピリットは「アンチゆとり教育」から-- NICT×高専×jig地方発の取り組み(前編) - (page 2)

文:加藤さこ インタビュー:島田昇(編集部)2007年03月07日 13時57分
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高専はベンチャー育成環境に適している

--ここ最近では技術力を重視するベンチャー企業に注目が集まっていますよね。

福野氏:ベンチャーで成功するポイントは、商品コンセプトとビジネスモデル、あとは技術だと言われています。そのうち、商品コンセプトとビジネスモデルは誰でも考えられます。しかし、技術は誰もが身につけているものではなく、商品コンセプトもビジネスモデルも、技術がないと成り立ちません。

画像の説明 jig.jp代表取締役社長兼最高経営責任者の福野泰介氏

木村氏:ずっと長い期間研究開発して立ち上がるような分野に比べて、ITはすぐに起業してIPOにたどり着きやすいと言われています。従って、ビジネスモデルだけでも簡単に資金調達できてしまうことがある。

 日本はこれまで、「ものづくりの国」と言われてきました。そのため、今後は「しっかりとした技術を重視して起業していこう」という考え方に逆戻りしていくと思っています。

福野氏:そういう観点で木村さんが高専に目を付けられたのは、素晴らしいことだと思います。高専は、「アンチゆとり教育」なんですよ。

 5年間、1時限100分の授業が毎日5時限もあります。そんな環境に中学生がいきなりきたら、普通は耐えられないですよ。試験で赤点があったら「さようなら」ということもあるわけですから(笑)。

 そのシビアな環境をいかにクリアするか、考えていかなければなりません。それで、生徒達がどうするのかというと、先輩に「過去問を下さい」と走り回るわけです。実際の社会で、どのように立ち回るのかという点も学習するのだから、強くなりますよ。

木村氏:太田先生と福野さんの話を聞いていて、高専には2つ特徴があると思いました。

 1つは実学教育。机上の学問だけでなく、実験をしながやっていく。もう1つは先輩後輩との連帯感が強いこと。今の高校教育では、この連帯感が非常にとりづらい状況にあるわけですからね。

画像の説明 福井工業高等専門学校教授(応用物理学)で副校長の太田泰雄(理学博士)氏

太田氏:福野さんは最初のビジネスを先輩達と始めたんです。クラブやバイト仲間もいました。高専の特徴は木村さんの仰るとおり、絆が強いことです。仲間同士で起業し、下の後輩を引っ張り上げようという意識が強いんです。

--福野さんの事例は福井高専特有の事例ということはありますか。

太田氏:高専自体はどこでも教え方は一緒です。ですから、福井高専に限らず、起業はどの高専でもあり得ると思います。起業で成功しているのは情報やデザインが多いです。メディア系も出つつありますね。店構えがいらないという点でも起業しやすいのでしょう。

 高専は今、工業高専がほとんどを占めています。つまり、学科の半分以上が企業しやすい条件を持っているんです。福野さんが卒業した電子工学科だけでなく、機械工学科を出てIT関係で成功している人もいます。

木村氏:太田先生が仰ったのは、我々にとって危機感でもあり、高専への期待感でもあります。日本全体を見ると理科系離れが進んで、情報系の学科は小さくなって他へシフトしているという状況です。

 IT社会をひっぱっていくには情報系の学科ですが、大学がその役割を果たせなくなってきています。その点、高専は情報系科目が多いですから。

福野氏:理科系離れというと、アメリカでもプログラマーはインド人、中国人という話を聞きます。どこでも技術者軽視で動いているんですね。

 世界的にそうならば、なおのこと、技術者にスポットを当てて起業を応援すると、世界に通用するベンチャーが出る土壌が作れるんじゃないでしょうか。

木村氏:だから日本のお父さん、お母さんに言いたいのは、もう少し世界的な視点を持って欲しいということなんです。

 日本の中だけで見ていると、「文科系に入って法学部、経済学部に行った方がつぶしが利くし、会社の待遇もいいだろう」と考えてしまいがちです。あるいは「理科系だったら医者だ」と。ですから、理学、工学部は二の足を踏んでしまう人が多いようです。

 それは日本の技術者が正しく評価されていないのが原因ではないかと思います。しかし、世界を見ていると技術者が要求されてきていることも事実なんです。

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