オリンピックでコンピュータゲームがスポーツ競技として認められ、金メダル争いに日本国民が一喜一憂する日が来るかもしれない――。「E-Sports」の登場によって、それが現実に近づいている。
E-Sportsとは、「Electronic Sports」の略。競技性の高い対戦型オンラインゲームをスポーツ競技の一種目として認めるもので、大規模な大会が開催されている国もある。
例えば、欧州では、フランスの「ESWC(Electronic Sports World Cup)や、ドイツの「ESL(Electronic Sports League、スウェーデンの「CPL Nordic(Cyberathlete Professional League Nordic)」などの大会が有名。莫大な賞金を掛け、プロゲーマーたちが腕を競い合い、優勝者はプロスポーツ選手並みのヒーローとして称えられているという。また米国では、E-Sportsの専門番組も放送され、盛り上がりを見せている。
一方、アジアで盛んなのは韓国だ。年間100大会程度のE-Sports大会が開催され、賞金総額は年間45億ウォン(約4億7500万円)にものぼる。また、SKテレコム、サムスンなど多数の企業がスポンサーとなり、11のプロチームが存在する。中国でも、2003年11月に中国国家体育総局がE-Sportsを99番目の正式体育種目に指定。2008年の北京オリンピックでの採用を検討しているという。
これに対して日本では、「WCG(World Cyber gemes)」や「CPL(Cyberathlete Professional League」の日本予選が開催されるなど、少しずつ浸透しつつあるものの、E-Sportsの一般の認知度はいまひとつというのが現状だ。
E-Sportsは、2007年10月26日〜11月3日にマカオで開催予定のアジア室内競技大会において、正式種目としての採用が決定している。しかし、日本選手の参加には、まずは国内統括団体を設立し、JOC(日本オリンピック委員会)の加盟手続きが必要。さらに、JOCがOCA(アジアオリンピック評議会)に対して、6月22日までに日本選手団の参加を申告しなければならないという課題が残されている。
ブロードバンド推進協議会が2月22日から23日に開催した「アジアオンラインゲームカンファレンス2007 東京」では「E-Sportsの現状と今後の展望」と題した講演会が開催され、電通スポーツ事業局の竹田恒昭氏と有限会社ネクサム Goodplayer.jp事業部の犬飼博士氏が登壇。E-Sportsについて語った。
竹田氏は「E-Sportsは日本は後進国で認知度はまだまだ低い。この大会で日本選手が金メダルを持ち帰ることが最大の広報活動だ」と語り、国内における、今後のE-Sportsの盛り上がりに期待を寄せる。
E-Sportsとスポーツとの違いは、「コミュニティー」の存在だという。E-Sports専門サービスを運営する有限会社ネクサムの犬飼氏は「E-Sportsは、コミュニティーを出発点として発展していくスポーツ」と語り、コミュニティーの存在なくしては成立し得ない点を強調した。
さらに「E-Sportsは、スポーツマンシップの育成やコミュニケーション能力の向上といった従来のスポーツ同様の効果をもたらすのはもちろんのこと、デジタルデバイドの減少にも貢献できる。競技はネットワークを通して行われるので、国際大会の開催も容易になる」と、E-Sportsのメリットを付け加えた。
また、E-Sportsは、人間の身体の動きや、思考、感情、精神をデジタルデータに置き換えて行われるスポーツだ。プレーヤーが求める、より高度なプレーが体験できる環境やサービスにともない、より高性能なハードとソフトのニーズを加速させることになり、産業界への影響も見込まれている。 犬飼氏は講演のなかで、E-Sportsの未来像を「たとえばバスケットコート一面にモニターが埋め込まれ、そこに映し出された、身体に入力デバイスを身につけたプレーヤーがコートへ上がると、その行動がデータ化されるというイメージ」と、個人的な願望を語った。CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
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