カリフォルニア州パロアルト発--どこの街も、渋滞、分かりにくい交通標識、道路の隆起、間抜けなドライバーが限られた空間にあふれており、そこを車で運転するとストレスがたまるばかりだ。
しかし、ドライバーのなかにソフトウェアで動くロボットがいて、無人自動車で市街地を運転していたら、そのストレスが一気に恐怖へと変わるのではないだろうか。一般に、このような複雑な環境での運転は、ロボットにはもちろんのこと、人工知能にとっても未知の領域だ。
スタンフォード大学Artificial Intelligence LabのシニアリサーチエンジニアMike Montemerlo氏は米国時間2月15日、「(自分たちのロボット操縦車両が)人間の運転する車や超大型車に紛れている状況は考えるだけでもちょっと怖い」と当地で語った。
Montemerlo氏は、米国防総省国防高等研究計画局(DARPA)主催の「Urban Challenge」参加に向けて最新のロボットを開発するスタンフォードのトップ科学者の1人。Urban Challengeは、11月開催予定の人工知能を競うロードレース。同局では、2005年にも「Grand Challenge」という砂漠レースを開催している。「Volkswagen Touareg」をロボット操縦式に改造したスタンフォードの「Stanley」号は、21世紀のAIにとって節目となるGrand Challengeで200万ドルの賞金を獲得した。最も早い7時間以内のタイムでゴールしたStanley号は、2005年に132マイル(約212キロ)のネバダ砂漠横断レースを完走したわずか5台の車両のうちの1台。その前年は、参加車両が1台も完走できなかった。
スタンフォードのAIチームは今回、Stanley号の後継となる「Junior」号(スタンフォード大学創業者のLeland Stanford Jr.にちなんだもの)を開発した。ベースはブルーの車体がまぶしいドイツ製の2006年式「Volkswagen Passat」のワゴン。アメリカ科学振興協会(AAAS)の年次総会に先立ち、Montemerlo氏とチームがJunior号とその技術をスタンフォードでCNET News.comに公開してくれた。AAAS年次総会では、スタンフォードのAIディレクター兼Stanford Racing TeamトップであるSebastian Thrun氏がJuniorを一般公開している。
Junior号はまだ開発途中だが、技術面では先代より既に大きく進歩している(Stanford Racing Teamでは3月にテスト走行に入る予定)。だが、ほかのロボット操縦車両や人間が運転するDARPAの車両と一緒に市街地を走行するという厳しい課題をこなすには、その知能をさらに進化させなくてはならない。
砂漠のレースに参加したStanley号は、ほかに操縦ロボットがいなかったため、岩やでこぼこなど、前方の地形を処理するだけで良かった。しかし、今回のレースに参加するJunior号は、ライバルであるほかのロボット操縦車両など、周囲を高速に移動するオブジェクトを認識する必要がある。また、たとえほかのロボットたちが違反をしても、自らは交通標識や信号などの基本的な交通ルールを理解していなくてはならない。Thrun氏いわく、「現在は、環境を検知する段階から環境を理解する段階に移行することが課題だ」という。
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