米航空宇宙局(NASA)のコンピュータをハッキングしたとして起訴されている英国人Gary McKinnon被告の運命は、米国への身柄引き渡しに関するロンドンの控訴院での審理が現地時間2月14日夕方から休廷となったため、中ぶらりんの状態になっている。
上訴審が始まってから2日の間に、McKinnon被告の弁護団は新たな証拠を提出した。この証拠は、米国政府のコンピュータに侵入して損害を与えたとして訴えられた被告の身柄引き渡しを却下すべきだということを意味している、と弁護団は主張している。
控訴院は英国法に基づいて最終審が行われる裁判所で、たいていの場合、上訴人の言い分を認めるか認めないかを判断するだけだ。しかし、McKinnon被告の弁護団は2月13日と14日の2日間、この訴訟で明らかになった証拠により、米国政府の主張について深刻な疑問が提起された、と主張している。
弁護団は、身柄引き渡しを即座に却下しないなら、McKinnon被告の訴訟を英国政府に差し戻すことを検討するか、欧州人権裁判所への上訴を認めるよう、控訴院に求めている。
McKinnon被告に対しどのような条件を提示して司法取引を持ちかけたかが、証拠の焦点だ。米国ではよく知られ、現在は英国でも非公式に行われている司法取引は、被告が協力することへの見返りとして、検察側が減刑などを提示するというものだ。
今回のケースで米国当局は、McKinnon被告が協力することに同意すれば3年以下への減刑を認めると持ちかけた。また、McKinnon被告の弁護団の弁護士、Edmund Lawson氏によれば、米国の「超厳戒態勢の刑務所」ではなく英国の刑務所で刑に服させるという見返りも提示したという。
事件そのものの事実関係に関しては、関係者全員の意見が一致している。法廷で論争の的となっているのは、その後の経緯だ。McKinnon被告側の主張によると、検察側のメンバーとして加わっている米国人が、司法取引に応じなければ可能な限りの重い刑を受けさせてやるとか「ニュージャージー州当局に身柄を引き渡して電気椅子に座らせてやる」などと、同被告を「脅迫」したという。
弁護側はさらに、 McKinnon被告が取引に応じなければ家族や友人のいる英国内での服役を認めない旨の発言が米国側からあった、と主張している。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス