「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」はKnoll氏にとって初めてのアカデミー賞ノミネート作品ではない。2003年にはHickel氏とともに「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」で、2002年と1999年にはそれぞれ、「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」でノミネートされている。
名声だけではない。ショットの修正に何が足りないかを見抜くKnoll氏の眼力は、映像制作の現場で広く知られている。
「Knoll氏の場合、『そこのところ、宇宙船が少しおかしい』とか、『宇宙船の位置が低すぎる』のような表現ではなく、『画面左の宇宙船を、そうだな、30ピクセルくらい上にずらしてくれ』という言い方をする」とMuszalski氏は言う。「作業に戻って、指示どおり空の明度を18%下げたり、宇宙船を30ピクセル動したりすると案の定--そのショットは完ぺきになる。気味が悪いほど、ぴったり構図が決まるのだ」(同氏)
ILMのデジタルスーパーバイザーで、シリーズ2作目となる「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」を手掛け、現在「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」に取り組んでいるMichael Sanders氏が、ILMのモーションキャプチャ技術について説明してくれた。センサーの付いたモーションキャプチャ用スーツを俳優に着せ、センサーのデータを特殊な赤外線カメラによって読み取り、俳優の動きをデジタルでレンダリングする同社の技術は、競合他社よりも優れているという。
Sanders氏はその理由の1つとして、モーションキャプチャ技術の効率化に成功したため、他社よりもはるかに少ない40台のカメラで俳優の動きを完全に記録できるという点を挙げた。
このキャプチャ技術がさらに進化すれば、監督は、俳優の演技を撮影しながら、彼が着るモーションキャプチャスーツの状態に基づいた実際のキャラクターの姿をリアルタイムで見ることができるようになる。もちろん「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのGore Verbinski監督もそうなるだろう。
Sanders氏は説明する。「ILMの技術によって特殊カメラの情報をコンピュータ内でリアルタイムに変換できるようになれば、監督がのぞいている撮影レンズに、プリプロダクション作業に基づくキャラクターのアニメーション映像を映せるようになる」(同氏)
同氏は、この技術は2、3年で実現しそうだと言う。
ILMの技術が急速に進歩するということは、ILMが依頼を受ける映画制作の要求レベルが高くなることを意味する。
こうしたことはすべて、監督や脚本に「攻めの姿勢」が生まれることにつながる、とSanders氏は語る。「誰にもまねできないようなものを作りたいと、誰もが思っている。そして彼らが『無理な相談かもしれないが』と持ち掛けてきたら、私たちは答えるのだ。『もちろんできるとも。半年もあれば』と」(同氏)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。 海外CNET Networksの記事へ
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