視覚効果の「パイレーツ」たち、オスカー獲得なるか--ILMが実現した最新技術を探る

 サンフランシスコ発--米国時間1月23日、第79回アカデミー賞のノミネート作品が発表され、Industrial Light & Magic(ILM)がCGを担当した2作品が視覚効果賞にノミネートされた。同賞を何度も獲得しているILMだが、今回は、13年前に同社が登場させた「フルCG」技術による初めての受賞となりそうだ。

 アカデミー各賞は、映画産業関係者で構成される会員によって「革新的」と絶賛された映画作品に与えられる。ILMがかかわった視覚効果賞ノミネート作品は、「ポセイドン」「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」の2つ。受賞が有力視されているのは、ILMの2人のアニメーションスペシャリストが携わった、後者の作品だ。

 視覚効果スーパーバイザーのJohn Knoll氏とアニメーションスーパーバイザーのHal Hickel氏が絶賛されたのは、何よりも、この映画に登場する怪物「デイヴィ・ジョーンズ」に生命を吹き込んだCGの仕事だ。事実、この完全コンピュータ制御のキャラクターは、映画関係者が畏怖の念を抱くほどの出来栄えだ。

 元ILMのアーティストで、現在はサンフランシスコのAcademy of Art Universityで学生たちを教えているAaron Muszalski氏は、「デイヴィ・ジョーンズは100%CGだ」と語る。「確かに、アニメーションの少なくとも一部には俳優の動きをデータに取り込んだものもあるが、出来上がりは完全に合成の映像だ。とにかく、すごいとしか言いようがない。John Knoll氏(とHickel氏)こそ、2007年のオスカーにふさわしい」(同氏)

 1月24日、Knoll氏とHickel氏をはじめとするILMのスタッフは、CNET News.comに、モーションキャプチャスタジオやデータセンターといったILMの裏側を特別に案内してくれた。彼らは、「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」の制作エピソード、次回作「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」、そしてILMが取り組んでいる未来のテクノロジについても語った。

 Knoll氏とHickel氏が映像を手掛けた「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」のアカデミー賞ノミネートの決め手は、ILMのモーションキャプチャ技術だった。

 Animation Magazine誌はノミネート作品の発表後、視覚効果賞について、「コンピュータグラフィックスの専門家でさえ、デイヴィ・ジョーンズは俳優のBill Nighy氏が特殊メークにゴム製の触手を付けて演じていると思い込んだ」と評した。「10億ドルの興行収入を上げた『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』だが、デイヴィ・ジョーンズが100%デジタルデータだという事実だけを取っても、ノミネートに値するだろう」(同誌)

 今回だけでなく2003年にも「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」で視覚効果賞にノミネートされた経歴を持つHickel氏は、アニメーション業界で最も有名な2つの企業で活躍してきた。

 Hickel氏はPixar Animationでアニメーション制作者としてのキャリアをスタートした。同社で彼は「トイ・ストーリー」を含むさまざまな作品を手掛け、1996年にILMに移った。

 一方Knoll氏は、1986年からILMに在籍し、24本の作品にかかわってきた。視覚効果のエキスパートとしての輝かしい業績に加え、同氏は、「Photoshop」の開発者としても名高い(1987年、兄であるThomas Knoll氏との共同開発)。

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