ソフトバンクのボーダフォン買収、通信キャリア3社の公式検索サービスや番号ポータビリティ制度の開始など、モバイルサービス事業者にとって激動の時代が続いている。第3世代携帯電話の契約者数が全体の約3分の2にまで達し、パケット定額制の普及が進むなかで、モバイルサービス事業者はどんな分野にビジネスチャンスを見いだしているのだろうか。
New Industry Leaders Summit 2006 Fall(NILS)では、モバイルサービス事業者の大手であるインデックス・ホールディングス、シーエー・モバイル、ディー・エヌ・エーの3社の今後の戦略が語られた。モデレーターはグロービス・キャピタル・パートナーズ パートナーの小林雅氏が務めた。
ディー・エヌ・エーは2006年2月に開始したモバイルソーシャルネットワーキングサービス「モバゲータウン」が、1日2億ページビューを達成するなど急速に成長している。会員は高校生を中心に約260万人おり、「1000万人の会員獲得を目指す」(ディー・エヌ・エー取締役の守安功氏)という。
「ユーザーやページビューが増えれば収益につながる。しかもモバゲータウンはお金に変えやすいビジネスモデルを取っている」(守安氏)
サイトに掲載するバナーやテキスト広告を掲載しているほか、無料で提供しているフラッシュゲームの起動画面やゲーム内に広告を載せる取り組みも始めている。また、地図上にユーザーが家を建てて遊べる「タウン」上に地域広告を掲載する計画もある。
広告収入以外にも、サイト内で使えるポイント「モバゴールド」の販売や、自社が運営するECサイトにユーザーを誘導するなど、さまざまな収益モデルを用意しており、2006年10〜12月のモバゲータウンの売上高は8億1000万円に達した。
順調に見えるモバゲータウンだが、守安氏は常に危機感を持っていると話す。「モバイルサービスは会員数の伸びが急に止まることがある。どんどん新しい機能やサービスを追加することが重要だ。“ヒマ”なユーザーが多いので、いかに飽きさせないかが鍵になる」
シーエー・モバイルはサイバーエージェントの子会社で、モバイル広告の代理店事業のほか、モバイルサイトの運営などをしている。特に最近は、着うたなどのコンテンツだけでなく、ニュースなどの情報を求めるユーザーが多いことから、検索、ポータルサイトに力を入れていくとシーエー・モバイル専務取締役の小野裕史氏は話す。
同社ではポータルサイトの「ixen」、検索サービスの「SeafTyy」を運営している。GoogleやYahoo! JAPANといったPC向けの検索事業者がモバイルにも参入しているが、小野氏は「公式サイトの多くはPCからアクセスできないなど、IP制限をかけている。このためクローラーがたどり着けない。また、携帯電話はPCに比べて通信速度が遅く、画面が小さいので一覧性が低い」とモバイルサービスならではの課題を指摘する。
そこで同社は、ロボット型の検索エンジンと人手で作成したディレクトリの両方を組み合わせたサービスを展開する。人気のある公式サイトなどはディレクトリで表示し、それ以外のサイトはロボット検索で表示する考えだ。また、はてなのキーワードやkizasi.jpの関連ワードなども併せて表示することで、1つの画面でユーザーがさまざまな情報を見せるとともに、検索連動型広告の「ケータイプレミアムサーチ」による収益化も目指す。
ポータルサイトについては、「1サイトで爆発的な人気を得るのは難しい」(小野氏)として、さまざまなジャンルのポータルを用意する方針だ。「飽きやすいユーザーに対して、次に移りやすいような環境作りをすることが重要だ」
インデックス・ホールディングスは2006年6月に持株会社体制に移行し、現在はインデックスを筆頭に約60社のグループ会社を持つ。モバイルサイトの運営から始まったが、現在はコンテンツの制作、配信やモバイルマーケティングの支援、出版事業など幅広く手がけている。
同社が2005年ごろから力を入れているのが、テレビ局と連携したモバイル動画配信サービスだ。携帯電話を1人が1台以上持つ時代になり、auのCDMA 1X WINやNTTドコモのFOMAハイスピードなど、第3.5世代と呼ばれる下り1Mbps以上の通信速度を持つ端末の普及が進んでいる。さらに2.5GHz帯を利用した広帯域の高速移動無線通信技術も、日本での商用サービス開始に向けて総務省が検討している段階だ。「通信ネットワークと放送波の両方を使って映像コンテンツを配信する」とインデックス・ホールディングス取締役新規事業推進室室長の大森洋三氏は意気込む。
インデックスはこれまで公式サイトで月額300円程度の利用料金をユーザーから徴収するモデルを取っていた。しかし最近では、モバゲータウンのように、有料サイトと同じようなコンテンツを無料で提供する企業も増えている。
この点について大森氏は「毎月課金型のビジネスモデルはPCサイトでも崩れており、モバイルでも今後は難しくなるのではないか。しかし、無料コンテンツがすべてというわけでもない」と話す。さらに、「企業のマーケティング予算の多くはテレビに組まれている」として、ユーザーへの課金だけでなく、テレビ局と連携したサービスで企業側から広告費などを取ることで収益を上げる考えを示した。
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