尾下:PCサイトとモバイルサイトの垣根を取り払うトリガーとなるのが検索だと思います。これまで携帯電話では、公式サイト、もしくは一般サイトへのアクセスで完結していた部分があります。しかし、検索によって一般サイト、公式サイト、PCサイトの3種類を同一画面上で比べられるようになれば、その垣根もなくなっていくでしょう。GoogleモバイルやYahoo! モバイルはPCサイトを携帯電話で見やすいようにレンダリングしています。携帯電話からPCサイトが簡単に閲覧できるようになったことで、市況も大きく変化しています。
佐藤:ビットレイティングスでは、2006年10月にWikipediaの検索結果を携帯電話で表示できるサービスを提供しました。これによって、今までPCで使っていたサービスをそのまま携帯電話で利用できるようになりました。これが非常に好評で、多くの方にご利用いただいています。これからは、いかにPCの世界観を早く携帯電話に持ってくるかが重要になってくるでしょう。
尾下:今後、ロングテールといっては大げさですが、ニッチなマーケットが立ち上がってきやすい環境になるのではないでしょうか。今まではキャリアによる公式メニューから、誰もが欲しがるような情報にたどり着くのは容易でしたが、逆にニッチな情報にたどり着くのは至難の業でした。それが検索によって大変簡単になり、必要な情報にダイレクトにアクセスできるようになります。これはユーザーにとっても大きなメリットとなります。
佐藤:例えば着メロサイトを考えた場合、現在は10万曲をそろえたサイトよりも、1万曲のラインアップを持つサイトを10個立ち上げた方が収益はいいのです。これは、ユーザーが欲しい情報にたどり着くための手段が不足しているから起きる現象です。検索は、こういったコンテンツビジネスを再構築するきっかけとなりうる技術です。
尾下:現在、モバイル広告業界は数少ない広告主を奪い合っている状況でしょう。モバイルをメディアとして育てていくためには、代理店などと協力して新しい広告主を開拓していくことが重要です。
また、モバイル広告市場では検索連動型広告が大きな割合を占めるようになると思います。ブランディングのための広告はPCの世界が中心になるでしょう。携帯電話の液晶サイズなどがさらに大型化し、表現力が向上すれば、ブランディング広告もあり得るとは思いますが……。
佐藤:携帯電話は、PCと違って他人と共有しないデバイスなので、パーソナライズが有効でしょう。ユーザーの行動に基づくターゲティング広告などは大きな可能性があります。モバイルはまだまだ発展途上ではありますが、潜在力は大きい。その可能性を信じ、市場をみんなで盛り上げていくことが重要だと思います。
佐藤:モバイルサービスはインタラクティブ性が重要です。サイトを見ているというより、サービスを使っているという感覚を重視しています。そのため、例えば、情報の並び方やユーザーの視線の動きに気を配っています。途中に使い勝手の悪い画面が入るとそこからユーザーは先に進まなくなるので、インターフェースには細心の注意を払っています。こういったノウハウは、検索サービスにも生かされています。
尾下:モバイル業界はこれまでユーザーをいかに囲い込むかというビジネスをしていましたが、それも変わっていくのかなと思います。当社がアグリゲーターとして成功事例を作っていき、新しい発想でビジネスを拡大していこうと考えています。
尾下:実は、あれもやりたい、これもやりたいというのがたくさんあります。コミュニティも非常にやりたいし、実際にコミュニティで成功している事業者をうらやましいと思っていた時期もあります。しかし、やりたいことがたくさんありすぎると、なかなか整理できなくなります。現在は検索事業に経営資源を集中投下すると決めています。検索を核に置き、子どもから大人まで誰でも使えるポータルサイトを目指しています。
尾下:将来的には、ほかの検索サービスと正面から戦わなければならない時期が来ると思います。そういったフェーズに入っているのであれば、上場はあり得ない話ではありません。ただし、今の規模では上場はしませんね。おそらく2008年から2009年ごろに、そういったフェーズに入っているのではないかと予想しています。
佐藤:モバイル業界は非常に厳しい競争の中にあります。本当の意味でマーケティング力のあるプレーヤーだけが残ることになるでしょう。そういった意味で、検索は新しいユーザー導線となりうるツールです。個々の機能を徹底的に強化することで、新しい市場展開も見えてくるはずです。
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