企業の成長は、決して経営者1人の努力だけでは無理だろう。その過程では、資金はもとより経営に関するアドバイスなどさまざまな支援が必要になる。こうした役割を担うひとつがベンチャーキャピタル(VC)だが、経営者とVCはどのようにして出会い、具体的にどういう関係を構築していくのか、そして人物像は。
IBM Venture Capital Group日本担当の勝屋久氏が紹介する形式で、VCと経営者の姿をリアルにお伝えする連載「経営者×ベンチャーキャピタリスト=無限の可能性」。今回は年末特別企画として、VCで活躍する女性ベンチャーキャピタリストに焦点を当てます。インテック・アイティ・キャピタルの遠藤弘子氏、日本アジア投資の落合加奈恵氏、ネットエイジキャピタルパートナーズの長谷川彩子氏の登場です。
勝屋:今回は現場で活躍する女性ベンチャーキャピタリストの方々にお集まり頂きました。最初に、自己紹介と皆さんが所属している会社の紹介をお願いします。
遠藤:インテック・アイティ・キャピタルの遠藤です。私はまず日興証券に入社して、すぐにグループ会社の日興キャピタル(現:日興アントファクトリー)に配属され、そこで企業の審査から投資管理など一通りVCの基礎を勉強しました。
それから10年くらい経った2000年のITバブルの頃に外資系のファンドなど新しいVCが日本にも進出してきて、いくつかお声をかけて頂いたんです。その中の1つで、クリムゾン・ベンチャーズという米国系のVCでしばらく仕事をしていました。ただ残念ながら外資系のグローバルファンドは見切りが早く、1年半ほどで撤退してしまったんですね。その時にインテック・アイティ・キャピタルから声をかけてもらって、現在に至ります。ですからこれまでに、証券系、外資系、事業系と3社のVCを経験しています。
インテック・アイティ・キャピタルはインテックの子会社で2000年8月に設立されました。事業会社系のVCではあるものの、投資の資金はすべてファンドでまかなっているという特徴があります。もちろんインテックグループも出資をしていますが、機関投資家やインテックグループの顧客など外部のお金を預かって運用していますので、我々はファンドのパフォーマンスを第一に考えています。
もうひとつの特徴としては、マネージメントチームがすべてインテックグループ外から招かれた、VCのバックグランドを持つ者で構成されていることです。投資に関したプロフェッショナルとインテックグループの事業基盤を掛け合わせた形でのユニークなVCを目指しており、設立当初から試行錯誤を重ねて、ここ数年でやっと形が見えてきたという実感が湧いてきたところです。
落合:日本アジア投資の落合です。私は新卒で2001年に入社しまして、現在6年目になります。最初の3年間に国内投資業務を担当し、今は海外企業への投資や投資先の管理業務などを担当しています。また、当社の国内外の投資先同士を引き合わせるような仕事もしています。海外の企業が日本のVCからの出資を受ける理由のひとつに、日本企業と提携を持ちたいという考えがあるからです。私たちのチームは組織的にそういったニーズをすくい上げて、日本の企業とつなぐ窓口業務を担当しています。
日本アジア投資は1981年に経済同友会を母体に設立された会社で、1996年に株式公開をした独立系のVCです。自由な雰囲気で、「ユニット制」という独自の投資体制を採用しています。VCではおそらく当社だけではないでしょうか。ある一定金額までは独自で投資判断できる決済権限を持っています。モバイル専門に投資をしていくチームや設立7年以内の会社に投資をするチームなどのようにテーマを決めているチームと、とくにテーマを決めずに投資をするチームがあります。
長谷川:ネットエイジキャピタルパートナーズの長谷川です。私は新卒で三菱自動車工業に入社しまして、自動車の輸出や海外の債権債務の業務を担当していました。3年半ほど経った時にベンチャー企業のスターティングメンバー募集という広告を見て、もしかしたら経歴や性別も関係なく仕事ができるんじゃないかと思い、転職しました。そしてその会社の株主にVCが入っていて、ベンチャーキャピタリストの方が社外取締役として参画していたことで、初めてVCという存在を知りました。
VCに関する本を読むうちに自分でもやってみたいと思うようになり、その取締役の方に「10年後にベンチャーキャピタリストになりたいのですが」と相談をしました。そうしたら「今すぐ入社すればいい」と言われたので、そのままVC業界への転職を決意しました。そのVCには9カ月在籍し、2006年3月にネットエイジキャピタルに入社しました。
ネットエイジキャピタルパートナーズは、純粋持株会社であるネットエイジグループのファイナンス・インキュベーション事業を担う100%連結子会社です。特徴は、インターネットビジネスに投資をフォーカスしている点と、少人数でやっているという点ですね。メンバー全員が個性豊かで、投資に関して社員の意志を尊重してくれる会社でもあります。
勝屋:遠藤さんと落合さんはどういういきさつでVCの道を選んだのですか。
遠藤:私は証券会社に入ったら配属がVCだったというだけなんです。「VCって何?」という状態で、当時は「証券会社に入社したのになぜ出向なのか」という思いの方が強く、異動願いをずっと出していました。ですから、仕事をやっていくうちに面白くなってきたというのが正直なところですね。
落合:私も不勉強ながら就職活動を始めるまでVCという存在を知りませんでした。就職活動中に日本アジア投資からダイレクトメールが届いて、初めてこういう業界もあるんだということを知りました。それで興味を持って、採用試験はVCばかり受けました。
新しい産業の育成に関われるところが面白いと思いました。世の中をより便利にするポテンシャルを持つ企業を自分で見つけて投資し、上場というひとつのゴールに向かって企業と一緒に走るところですね。さまざまなタイプの経営者、成功したいという強い意志を持つ人に会えるのも魅力的だと思いました。
1990年立教大学法学部卒業後、日興證券に入社。1995年まで日興キャピタル審査部にて数多くの投資案件のデューデリジェンスを手がける。その後、投資企画部に在籍しベンチャーファンドの企画及び法務業務に携わる。2000年8月より、米系VCのCrimson Ventures東京支店にて投資および法務業務に従事し、2002年1月より現職。日本アナリスト協会検定会員。
趣味:週末はお茶(表千家)のお稽古をしています。年数だけは長いです
投資先(インテック・アイティ・キャピタル):セラーテムテクノロジー(大阪証券取引所ヘラクレス市場:4330)、Eigner US(2003年8月にAgile Software Corporationに買収)、プラネット(ジャスダック:2391)、リスクモンスター(大証ヘラクレス:3768)、アクセラテクノロジ、3PARdata、イーライフ、ゲイン、データコア・ソフトウェア、Wily Technology、イズ
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