製品の安全性を求める声が高まる中、ノートPCメーカーは新しいタイプのバッテリや納入業者を精力的に試している模様だ。
リチウムイオンバッテリが、ノートブックや消費者家電の電源としてデファクトスタンダードになったのはもう何年も前のことである。しかし、バッテリが原因で最近起こった事故や火事は数百万ドル規模の大型リコールを招き、ソニーおよびDellといった有名企業が相次いで評判を落とした。
新興企業Boston-Powerは、安全で高い効率性を実現すると同社が述べるリチウムイオンバッテリを開発し、市場に参入する構えを取っている。Boston-Powerの最高経営責任者(CEO)であり創立者でもあるChristina Lampe-Onnerud氏は、相手の社名は明かせないものの、同社はある大手ノートPCメーカーと契約をまとめようとしているところであり、2007年半ばにはBoston-Power製バッテリを搭載した携帯型PCが登場する見込みだと語った。
Boston-Powerが2006年に入って新たなバッテリの出荷時期を発表したときには、最初の顧客を獲得する寸前まで来ていることは公にされなかった。コンピュータ部品の新興企業がデバイスメーカーと具体的に交渉したり、ましてや初契約を締結したりするまでには、何年もかかるのが普通である。だがBoston-Powerの場合は、Lampe-Onnerud氏などの幹部がバッテリ業界に長年従事していたというアドバンテージがあった。
IDCのアナリストRichard Shim氏は、同社の幹部らは確かな業績を上げているが、バッテリ市場は手強い相手だと指摘する。
「Boston-Powerが交渉の切り札としている新製品のメリットが、他社に奪われてしまうことも考えられる」(Shim氏)
Shim氏によると、Lampe-Onnerud氏はIDCに大手ノートPCメーカーとの契約が進んでいると話したが、メーカーの名前は明らかにしなかったという。
ほかのリチウムイオンバッテリ関係の新興企業は、Boston-Powerほど秘密主義ではない。例えば、自動車向けのリチウムイオンバッテリを製造しているValence Technologiesはカソードの化学的性質を変化させ、競合社のAltair Nanotechnologiesはアノードを同様に変えている。カソードおよびアノードは異なる極性の電気を引き寄せるが、リチウムイオンバッテリ内でこれらの質が劣化すると粒子と電解液が相互作用し、急激な熱反応が起きたり、最悪の場合は発火したりする。
リチウムイオンに問題があることから、別の物質を探そうという動きも活発化した。一部の企業は、ノートブックメーカーは安全性が高いと言われているリチウムポリマー技術を採用すべきだと主張しており、一方で別の陣営は亜鉛ベースのバッテリを推奨している。さらには燃料電池メーカーも、いよいよ自分たちの出番だと意気込んでいる。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス