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ベンチャーは与えられたルールを壊してこそ成功する - (page 4)

永井美智子(編集部)2006年12月06日 13時30分
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勝屋:瀬戸さんも事業計画書の段階からぶれていないと伺いました。

瀬戸:事業計画書を作る時のつらい部分は、とにかく利益よりも売り上げを大きく見せないとお金が集められないことなんですよね。そういう意味では頑張り過ぎてしまったところもありますね。当初は薄利多売を考えていたので、すぐに年商2000億円くらいいくと考えていたんですが、途中でそういうやり方はできないと思って軌道修正をしました。でも、調達したお金は基本的に顧客獲得のために使う考えだったので、そこはあまりずれてないと思いますよ。

本間:事業のコンセプトはまったくぶれていないですね。当初からデータベースをどう作るかとか、検索エンジンをどう作り込むかといったことまで考えていましたから。

 タイミングのずれはどんな事業でもあると思います。でも、コンセプトや狙っている市場がぶれると投資家としてはかなり困ってしまうんですよね。MonotaROの場合も都度いろいろ微調整をしているので、数字面では全然違います。でも、コンセプトや、狙っている市場、どうしてこのビジネスは勝てるのかという部分は5年前と変わっていないんですよ。それはすごいと思います。

勝屋:経営者側として、VCとどう付き合ったらいいと瀬戸さんは考えますか。

瀬戸:それはもう正直にやっていくしかないと思いますよ。私の正直さが一番試されたのは、やっぱりVCからお金を集める時でした。何十社も回って全部断られたのですが、たいてい1回目に会ったときには断られないんですよ。「もう1回来てください」「もう1回来てください」と言われるうちに、駄目なのかなというのが分かってくるんですよね。

 そうやって何回も自分の考えを否定されていくとだんだん自信がなくなってきて、「瀬戸さん、このビジネスモデルってこういうことですよね?」と言われると、必ずしも自分でそう思ってなくても「そうです」と言ってしまう時があるんですよ。相手に迎合しちゃうんですね。本当に1度そう答えてしまったことがあって、後から電話をして「実はそうじゃないんです」って説明したこともありました。

 結局、その会社は出資してくれませんでしたが、いい加減な返事をしたまま出資してもらっていたら、あとで問題になったと思うんですよね。だから、自分のやろうとしていることに自信があるなら正直にやった方がいいし、うまくいってないことがあったら「うまくいってない」と言った方がいいと思います。VCに限らず、すべての株主に対してそうするべきだと思いますよ。今、世の中に起きている問題の大部分は、正直に話さなかったことから起きていると思うんですよね。やっぱり正直が一番だと思います。

勝屋:本間さんと出会って良かったと思いますか。

瀬戸:社長というのは本当に孤独な仕事なので、「瀬戸さん、その通りですよ!」「それはうまくいきますよ!」って背中を押してくれる人が欲しいものなんですよね。社員にそれを言わせたら会社が駄目になってしまうので、社員に言わせてはいけないんですが、やっぱり誰かに認めてもらいたいという心理はあるんですよ。そういう時に本間さんが声をかけてくれるのは嬉しいですよね。

 しかも、本間さんが言うということは、いろんなベンチャーを見た上で客観的に褒めてくれていると思えるじゃないですか。それはすごく勇気づけられますね。

 私にとって一番困るVCは、すぐに利益を出せというタイプなんですよ。早い段階から利益を求めるのは地獄への一本道だと私は思っていて、最初は苦しくてもお金をかけていかないといけないと思っているんです。それを本間さんは理解してくれます。VCは短期的な見方になりがちなのに、本間さんは小さな浮き沈みに関しては何も言わないんですよ。うまくいっている時だけ褒めてくれる。それはすごく感謝していますね。

本間:お褒め頂いてありがたいです。ただ、これも相手を見て言っているところはあるんですよね。瀬戸さんはこれだけ細部を詰めて事業をやる人なので、人材に関することなど、普段なかなか手の回らないところ、社員の方に相談できないことを僕がやる方が意味があると考えています。あと、基本的にVCは、投資後はネガティブになっても仕方ないんですよ。前向きなことしか議論する意味がないんです。批判を含めた議論は投資する前にすることで、投資してからはそういう無駄な時間は社長から排除した方がいいと思っています。

勝屋:瀬戸さんは、今後さらにMonotaROをどう成長させていきたいですか。

瀬戸:できるだけ儲けたいというのは経営者として当たり前のことで、それは頑張りたいんですが、それは目標として意味がないと思うんですよね。100億円より200億円儲けたいと思うし、200億円より300億円の方がいいに決まっている。

 だから本当に最後に意味があったと思えるとしたら、それはどういう会社を作ったかだと思うんです。会社という言葉を逆さまにすると社会ですよね。だからいい社会を作れたかどうかが私にとっての評価になると思います。この場合、働いてくれている従業員が社会の構成員です。従業員がこの社会にいれて良かったと思ってもらえるような会社を作れたら、それは私の仕事が成功したということなんだと思います。それはひとつの目標にしたいですね。

勝屋:今は大阪に本社を置いていますが、拠点を東京に移すことは考えていますか。

瀬戸:それはありえないですね。ふたつ理由があって、ひとつは今当社で働いている従業員は、大阪の会社として入社していることです。それを異動させるというのはそれだけで従業員にとっては苦痛ですよね。

 もうひとつは、地理的な問題です。この事業を始めてから分かったことなんですが、当社が取り扱っているような商品は、必ずしも翌日に配達する必要はないんですよね。ある程度の在庫はどこの事業所も持っていますから。非常にニッチな商品が多いので、在庫は持っておく必要はあるんですが、物理拠点をたくさん持つ必要はないんです。

 実際の売り上げ構成を見ても、県による違いはほとんどありません。距離によって配達に必要な日数が違うにもかかわらず、県の差はないんですよ。拠点を1カ所に集約させることで、本当にたまにしか注文が来ないニッチな商品まで在庫として持っておけますし、商品の点数を広げられるということがお客さんの利便性にもつながるんです。

勝屋:なるほど。本間さんの今後の目標は何ですか。

本間:VCとベンチャーは役目がそもそも違うので、自分がベンチャーをやるということはないと思いますが、僕が一番嫌なのは能力がある人が何もしない状態なんです。先ほどの社会の話に当てはめれば、それは一番駄目な社会だと思うんです。能力がある人が適切な能力を発揮するためにVCがあるのだとすると、大企業にいる方を外に連れ出すとか、ベンチャーをやっている人をさらに大きくするといったように、もともと能力がある人をその能力が発揮できるようなポジションで仕事をさせてあげることができればいいと思っています。

本間氏と瀬戸氏

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