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ベンチャーは与えられたルールを壊してこそ成功する - (page 3)

永井美智子(編集部)2006年12月06日 13時30分
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勝屋:本間さんはまだお若いですが、瀬戸さんと信頼関係を作っていく過程で年齢差は気になりませんでしたか。

本間:やりにくいことはなかったんですが、どうしても経験の差はあります。ビジネスモデルはもうでき上がっていたので、僕は中長期的に事業を拡大するためのアイデアやきっかけを与えるような役割を果たそうと。瀬戸さんが僕のことをVCっぽくないとおっしゃったのは、まさにそういう立ち位置だったからだと思います。

勝屋:瀬戸さんは大手商社に勤めて、MBAも取られたわけですが、それでもなぜ起業しようと思われたんですか。

瀬戸:ベンチャー経営というのは、本当に意義のある仕事だと思うんですよね。ベンチャーがなぜ成功するかというと、それは与えられたルールを破るからだと思うんです。ほとんどすべてのサービスには既存の業界がありますから、その既存の業界と同じ形をやっても成功する可能性はゼロに近い。

 例えば、セリエAのサッカーチームにいきなり僕が入っても成功する可能性はないでしょう。もし僕がセリエAのチームでゴールを奪うチャンスがあるとしたら、それは手を使ってボールをゴールに投げ込むことでしょうね。ベンチャーというのはそういうことで、違うルールを持ち込むことで成功するチャンスが出ると思うんです。

 もともと業界にいる人たちはルールを守ろうとしますが、そのルールはだんだんと意味がなくなっているケースも多いです。かつてはそのルールが世の中に役立っていたかもしれないけど、今はその業界にいる人たちだけにとって良いルールであって、世の中全体にとっては良いルールではないこともあります。それを変えることができるのがベンチャーだと思うんです。既存の企業はそこで利益を上げている以上、ルールを変えようというモチベーションはありませんからね。つまり、既存の企業だけで世の中が動いている限り、発展はないわけです。確かにベンチャーは山のように生まれて、山のように死んでいくかもしれませんが、何かを変えるきっかけになればそれは意義があると思います。

 我々がやっている間接資材の業界に関しても、高度成長の時代はそれなりに合理的な仕組みで動いていたかもしれませんが、今ではものすごく不合理になっていました。それを変えることができるのはすごくハッピーなことですよね。だから大企業にいたとかMBAを取ったとか、そういうことは関係ないんです。ベンチャー経営ができるというのは人生においてすごく幸せなことですからね。少なくとも社会に何らかの貢献はできるわけで、そういうチャンスを与えられたこと自体が嬉しいです。

勝屋:MonotaROはベンチャーのいわゆる「死の谷」(編集部注:事業開発に投資がかかる一方で、売り上げがない期間のこと)を越えて、きれいなカーブを描いて成長しているそうですね。

瀬戸:私に取っては死の谷なんてなかったですよ。こうなると思ってやっていましたから。

 変な話ですけど、当社が最初に苦しければ苦しいほど、次に参入してくる企業はもっと苦しいんですよね。当社の場合、最初の段階では利便性で勝負をしたのですが、利便性を追求したサービスは、ある大きな矛盾を抱えます。それは、便利なものというのは、慣れているからこそ便利であるという部分です。つまり、切り替えるという作業に対して、そもそも人は便利だと感じない。だから人は便利だと思うようなものに対しても、なかなか切り替えることができないわけです。

 そうなると当然、最初は誰も飛びつかないので、顧客獲得にはコストがかかるんですよね。そして、そこに多くのコストがかかっているビジネスに対して挑戦しようと思ったら、もっとコストをかけて、もっと説得力を出さないといけないわけです。だって私が一生懸命変えたものをもう一度変えないといけないわけですから。

 おそらく、私が30億円かけたものに対して、次に来る人は100億円かけないと駄目でしょう。逆に言うと、お客さんが変えにくいような利便性をどんどん築き上げることが私たちにとっては大切になってくるわけです。最初から儲かってしまう会社が何年も持ったためしはないと思いますよ。

勝屋:なるほど、面白い話ですね。ところで話は変わりますが、VCの社会的意義や魅力について、本間さんはどう思われますか。

本間:ベンチャー企業が「こういう面白いアイデアがある」と言っても、普通、自分の仕事に関係なければそんなに話は聞かないですよね。でも、VCはそういった話を聞くことを仕事にしているので、最終的にお金を出すかどうかは別にして、少なくとも話は聞く。そこにまず付加価値はあると思います。

 よくVCは成功へのクリティカルパスが分かっているというような見方をされることがありますが、それは間違いで、むしろやってはいけないこと、禁じ手などが分かるんですよね。たくさんの事例を見ていますから。それは瀬戸さんにも話をしますね。

勝屋:本間さんはどういう基準で投資を決めているんですか。

本間:アーリーステージで関われる案件とミドル、レーターステージで関わる案件では、基本的に質が違うと思います。

ワークス・キャピタル シニアマネージャーの本間真彦氏

 アーリーステージで関われる案件に関しては、原則としてだいたいお金がどれくらいかかるかが決まっているものですね。開発が進むたびに資金を調達しなくてはいけないような案件は投資したくないので、「こういうプランでここまではお金をかける」ということがある程度見えている案件に投資をしています。そういう意味で瀬戸さんのところは当社でも投資できるぎりぎりの案件だったと思いますが、実際、30億円使うと言って本当に30億円までしか使っていませんからね。

 あとは月並みですが、社長の考えがぶれない会社ですね。社長の考えがぶれるケースは予想以上に多いです。僕もこの仕事に入ったばかりの頃、社長は何でも見えていてオペレーションをしていると思っていたんですが、実際はかなりぶれるんですよね。もちろん、そこをぶれないようにするのがVCの仕事だとは思いますが、あまりにもぶれやすい社長には投資をしてはいけないなと思います。

IBM Venture Capital Group ベンチャーディベロップメントエグゼクティブ日本担当
勝屋 久

1985年上智大学数学科卒。日本IBM入社。1999年ITベンチャー開拓チーム(ネットジェン)のリーダー、2000年よりIBM Venture Capital Groupの設立メンバー(日本代表)として参画。IBM Venture Capital Groupは、IBM Corporationのグローバルチームでルー・ガースナー(前IBM CEO)のInnovation,Growth戦略の1つでマイノリティ投資はせず、ベンチャーキャピタル様との良好なリレーションシップ構築をするユニークなポジションをとる。7年間で約1800社のベンチャー経営者、約700名のベンチャーキャピタル、ベンチャー支援者の方々と接した。Venture BEAT Project企画メンバー、総務省「情報フロンティア研究会」構成員、ニューインダストリーリーダーズサミット(NILS)企画メンバー、大手IT企業コーポレートベンチャーキャピタルコミュニティ(VBA)企画運営、経済産業省・総務省等のイベントにおけるパネリスト、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の中小ITベンチャー支援事業プロジェクトマネージャー、大学・研究機関などで講演、審査委員などを手掛ける。ベンチャー企業−ベンチャーキャピタル−事業会社の連携=“Triple Win”を信条に日々可能な限り多くのベンチャー業界の方と接し、人と人との繋がりを大切に活動を行っている。

また、真のビジネスのプロフェッショナル達に会社や組織を超えた繋がりをもつ 機会を提供し、IT・コンテンツ産業のイノベーションの促進を目指すとともに、 ベンチャー企業を応援するような場や機会を提供する「Venture BEAT Project」 のプランニングメンバーを務める。

趣味:フラメンコギター、パワーヨガ、Henna(最近はまる)、踊ること(人前で)

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