デザインから見るデジタルプロダクツ第2回:ソニー「ウォークマンNW-S700F/S600シリーズ」

インタビュー・文:山口優2006年11月29日 17時46分

ソニーの「ウォークマンNW-S700F/S600シリーズ」は、本体内にノイズキャンセル機能を内蔵した、これまでにないタイプのオーディオプレイヤーだ。そのなだらかな曲面で構成された流線形のデザインは、高級アクセサリーの気品と遊び心を兼ね備えている。そんな「ソニーらしさ」を体現したような「ウォークマンNW-S700F/S600シリーズ」のデザインが生まれた背景について伺った。

音を形にする、から生まれた流線形デザイン

モックアップとの比較 一見するとどちらも製品版に見えるが、実は写真上がモックアップ、下が製品版だ。モックアップの段階からデザイン的なブレがほとんどないことがわかる

--今回のNW-S700F/S600シリーズのデザインコンセプトについて教えてください。

森澤 この商品のデザインは、もともと昨年発売されたウォークマンAシリーズに端を発していて、そのときのコンセプトが「音を形にする」というものだったんです。音楽というものは常に移り変わって流れていくというイメージがありますが、それを形にしたらどういう形になるのだろうか、と。そこで、終わりのない曲線を引くことで、止まらない音の流れを表現できないか、と考えたんです。

ソニー/森澤氏 ソニー株式会社
クリエイティブセンター
コンセプトデザインスタジオ
クリエイティブディレクター
森澤有人 氏

--デザインのアイデアになったものはありますか?

森澤 「ウォークマンというものは何か」というのを突き詰めて考えると、「それは楽器なんじゃないのか」というところに行き着いたんです。具体的には管楽器のイメージが近いですね。それで、ガラスのパネル部分を際立たせて立体感を持たせ、金属のフレームで全体を包み込むようにして力強さを表現しました。ただ、スケッチだけではそうした部分を伝えるのが難しいんです。それで、今回は最初からモックをつくってメンバーに提示しました。

渡辺 そのモックを見たとき、メンバー全員が「この形を壊したくない」と思ったんです。そこで、そのデザインを実現するために技術的にもいろいろな試みをしています。

ソニー/渡辺氏 ソニー株式会社
コネクト事業部
PD商品設計部3課
渡辺浩紀氏

--具体的にはどのような試みでしょうか?

渡辺 正直なところ、曲線だと実装効率はあまりよくないんですよ。中に入れるパーツの高さや大きさがバラバラですから。そこで今回は、フレーム自体にシャーシの役割を持たせてセンターを広く取り、そこにいちばん大きいもの、つまりバッテリーを配置しました。パーツ自体も高いものと低いものにわけて、うまく収まるように実装しています。そのため、内部はほとんど隙間がない状態になっているんです。

高音質モデルにノイズキャンセリング機能を搭載したい! という強い思い

--ノイズキャンセリング機能も今回の製品の大きな特長ですよね。

ソニー/伊藤氏 ソニー株式会社
コネクト事業部
商品企画部
プロダクトプロデューサー
伊藤博史氏

伊藤 お客様に、今だかつてない高音質を体感していただくためには、まずは音楽に浸っていただく「静かな環境」が必要でした。その意味でノイズキャンセリング機能には早くから着目しておりましたが、「騒音と逆位相の音を作り出して音をミックスする」という技術からも、高音質と謳うには、ハイレベルでのノイズキャンセリング技術の進化が必要であり、そのあたりの技術的課題が解決できるタイミングを見計らっていました。

渡辺 そして今回、いよいよ本体にノイズキャンセリング機能を内蔵するという話になったんです。ただ、そうなるとヘッドフォン側に搭載されたマイクで集音したデータを本体に伝えなければいけない。しかし、ヘッドフォンジャックの互換性は保たせたい。そこで、従来のジャックに2端子追加したものを新しくつくったんです。

森澤 端子を増やした結果、ジャック部分のパーツサイズが(従来のジャックに比べ)縦横1mmずつ大きくなってしまいました。全長も2mm伸びていますね。そうすると、ジャックを覆っているジョグシャトルの大きさが変わったり、全体の中心点が変わったりして、デザインイメージが崩れてしまうんです。それで、ジョグ自体の形を変えたり、中心点を変えたりして、デザイン的にも調整が必要でした。

渡辺 そうすると、曲面自体が変更になるので、中の構造物も全部移動しなければならない。新しいジャックの作成にあわせ、全体的な構造も新たに検討がされました。


PICK UP ITEM
ソニー/ウォークマンNW-S700F/S600シリーズ(デジタルプレーヤー)

walkman NW-S706F、NW-S605F こだわりを凝縮したミニマルデザインの最高峰

スリムデザインとつややかな質感で人気を集めるソニー「ネットワークウォークマン」の最新機種。上位機となるS700Fシリーズは、ノイズキャンセリング機能を内蔵するなど、デジタルポータブルプレイヤーの中でも高い完成度を誇る。美しいカラバリを揃えることでも定評のあるシリーズだが、今回も全8色展開と充実している。本体と一体化されたネックストラップ部、画像表示まで行える有機EL搭載とコンパクトサイズの中に“こだわり”を凝縮する。

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