モバイルコンテンツビジネスは、端末の普及台数と同様踊り場に来た--最近その類の質問に何度出会ったことだろうか。モバイルコンテンツ市場は2004年2603億円規模から2006年の3150億円と約120%の成長率にとどまり、モバイルEC市場の急激な拡大と比較すると、その勢いは確かに踊り場にきているというのも適した表現かもしれないと思う。
しかし、その中でも次なるモバイルコンテンツのヒントと芽はまだまだ存在する。急激なモバイル市場の変化によって話題豊富な業界であるため、見落としがちにはなるが、今回はコンテンツビジネスにおける視点を見ていきたい。
モバイルコンテンツにおいて、ここ最近の「ヒットコンテンツ」と言えるものは3つに区分できる。
順に見ていくと1つ目のリッチコンテンツには、着うた・着うたフル、動画、電子書籍の3つが大きい。着うた・着うたフルに関してはここでは深く言及する必要はないかと思う。時間が経つほどに市民権を得た着うたは、CDなどのプロモーション用途とデジタルコンテンツの間に揺れながら存在していたその立ち位置から、1曲まるごと楽曲配信をする音楽配信ビジネス、いわゆる着うたフルに移行した。この市場は、音楽業界の再編と枠組みの確立の重要な鍵となり、その注目度はしばらく続きそうだ。
電子書籍ではコミック(漫画)が人気となり、小説など他の分野に大きくリードする形で普及していった。集英社の「マンガカプセル」や講談社の「MiChao」など、大手出版社もケータイサイトに乗り出しモバイルコンテンツカテゴリーに電子書籍を定着化させ、2006年はまさに電子書籍元年となった。既存の作家、出版物の電子権利化だけでなく、オリジナルや新人、同人誌作家の作品も掲載・販売されるなど2005年の着うたで生じた、既存メディアとの流通の逆流現象も生じている。その規模も45億円を超え(インターネット生活研究所調べ)、PCの電子書籍市場規模と肩を並べている格好だ。
また、パケット通信の定額化普及よって、ユーザーの大容量コンテンツ利用に心理的許容が拡大し、さまざまな動画コンテンツが登場した。通信事業者、端末、ストリーミングかダウンロードかといった配信方法、画質などの細かな仕様と差異は割愛するが、15秒〜3分程度の動画は、十分な品質で提供できるようになった。実際に配信されている動画は、ドラマやアニメなどすでに配信・放送されたものをケータイ用に編集したものや、ショートフィルム、映画予告編、ミュージッククリップなど、ケータイで動画を見るという利用シーンにあったものが人気だ。しかし、権利調整上の問題もあいまって、まだまだ動画コンテンツ単体で課金することは難しく、無料での視聴に広告を組み合わせたビジネスの枠組みをでていない。
手前味噌ではあるが、弊社の提供する3キャリア公式サイト「CinemaStyle」などでは、映画情報を提供しているが、ユーザーが上映中の映画や映画館を検索するのと同時に、その映画の予告編映像を確認できる。PCがある机の上ではなく、上映を待つ時間や友達との待ち合わせの時間など、ちょっとした隙間の時間に視聴する価値のある動画は好調である。
2つ目のコミュニティコンテンツは、モバイルソーシャルネットワーキングサービス(SNS)やブログ、メールコンテンツである。その中でもデコメールは、メールコミュニケーションにスパイスを加え、大きなヒットとなった。モバイルSNSやブログなどのサービスは、単独では、コンテンツ利用料金が成立しにくく、広告収益型になる。また、既存の公式サイトの中にSNSやブログ要素を取り入れた機能を導入しても、公式サイトのルール上、不特定ユーザー間のコミュニケーションは許されておらず、その運用上の管理費用を大きく必要とし、結果としてその費用対効果に疑問が残る。しかし、一定のユーザーを滞留、リピートアクセスさせるための手段としては、有効である。
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