では、どこにモバイルコンテンツの伸びる要素があるのだろうか。重要なポイントは、以下の2つの価値だ。
大なり小なりキャリアは新端末の販売促進のためにさまざまなソリューションを導入する。その導入タイミングがコンテンツビジネスにおける参入タイミングである。携帯電話の買い替えを喚起するためにケータイに新機能が搭載されるわけだが、その特徴がユーザーに伝わりやすくなるために、ソリューションとコンテンツの両輪を回さなくてはならない。また、新端末は、ケータイトレンドに敏感なユーザーがまず手にする。そのヘビーユーザーの動向をキャッチすることも重要な戦略となる。
2つ目の利便性価値は、上述のヒットコンテンツの成功要因にも共通するが、ユーザーの利用するタイミングの創出による価値である。首都圏と地方でケータイの利用は大きく違う。たとえば、電車の乗り換え案内サービスなどは、首都圏の利用が圧倒的である。情報やサービスが氾濫する首都圏では、常に情報の入手、その価値判断を選択しながらの生活である。常に身近にあるケータイを活用して、その価値判断を円滑になっていることが重要なのである。
最近の事例としては、GPSソリューションがそうである、各キャリアにおいてほぼすべての端末に搭載が決まっているこの機能は、ユーザーがコンテンツプロバイダーなど第三者に自分の位置情報を開示することができ、その位置情報を活用したサービス、情報を受けることができる。これはすべてのコンテンツサービスジャンルで活用できる機能である。極地天気予報や、地域ニュース、災害、防犯、などの情報サービスから、ゲームアプリや占いなどのエンターテインメントコンテンツまで、ユーザーの時間、ニーズに“位置“が加わりを受け取り、ユーザーがもっとも欲しくなるタイミングで提供できることには、これまでにはない価値を生んでいる。
この1年の顕在化した業界課題、ヒット要因を見てみると、モバイルコンテンツビジネスは客単価をあげることができにくい側面があることに気づく。それは公式サイトの市場ができたことの弊害であるのかもしれない。月額315円という価格があまりにも強くユーザーの購買心理に影響し、それ以上の価格帯を許容し難い壁を生んだ。しかし、それに甘んじることなく、真の価値あるモバイルコンテンツは、従量課金との組み合わせや、月額525円の価格帯のサービスを投入するなど、その障壁を崩そうとしている。モバイルコンテンツはこれからが本番。モバイルならではの強みを生かしたコンテンツサービスは、本当に生み出していく土壌ができたといっても過言ではないと考える。
2001年よりシンクウェアのモバイル事業立ち上げ、コンテンツ事業、メディア事業、ソリューション事業、人材紹介事業などモバイル分野でのさまざまな事業に挑戦、事業推進を行う。主なサービスに3キャリア公式映画サイト「CinemaStyle」、ケータイコンテンツマネジメントシステム「MobileDirector」などが存在する。モバイルマーケティングソリューション協議会(MMSA) 副理事長。
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