番号ポータビリティ開始で見えたケータイ需要の変化 - (page 2)

 例えば、すでに加入者回線系では大きな存在感を示すようになったIP電話。これまでの交換網系とは根本的に異なる仕組み=インターネット技術の導入により、多様な帯域幅でさまざまなサービスを利用できるメリットがあるのは、ご存じのとおり。その恩恵を音声による場所を選ばないコミュニケーションとして受けるのがIP電話だが、当然のことながらその波は、固定通信網だけでなく移動体通信網=ケータイにも押し寄せつつある。

 ともすれば、キャリアが端末を含むすべてのサービスを規定してきたケータイ市場にIP化の波が影響を及ぼし、キャリアは無線でさまざまな情報をただ送って受け取るだけの「土管屋さん」になりかねない・・・。そんな状況になることはまだまだ先だとは思えるものの、それに対する先手を打つ事業者も現れている。ドコモだ。

 具体的な先手とは、インテルと共同で開発したケータイ端末の技術仕様「Open and Secure Terminal Initiative(OSTI)」アーキテクチャの発表だ。

 1つのハードウェアに複数のOSを搭載し、それらの切り替えを可能にするOSTIは、当面、法人向け端末などで使用されるのではないかと類推できる。OSTIではキャリアが提供する端末がもともと有する、基本的な通信機能を制御する「オペレータードメイン(既成領域)」とは別に、ユーザーが求める任意のOS、そしてその上で動作するアプリを任意に開発、搭載できる仕様となっている(ユーザーといっても、必ずしも消費者=ケータイ利用者というわけではなく、ドコモのケータイを開発するメーカーかもしれないし、大人数で採用する法人ユーザーかもしれない)。

 ハードそのものとOSの間に領域制御部(ドメイン・アブストラクション・レイヤ:DAL)を用意することで、複数のOSを搭載して切り替えられる(OSスイッチング)ようにし、さらにユーザーが搭載した通信機能を制御しないOSでもケータイの通信機能を利用可能にする仮想化技術(仮想マシンモニター)も備えている。結果、OSTIは、Windows MobileやEmbedded Linuxなどユーザーが開発しやすい任意の環境で、通信そのものの深い理解なしで開発されたアプリを、メモリのダイレクトアクセスや、フラッシュメモリやHDDなどの内蔵大容量記憶装置との連動も含め、ケータイという1つのハードウェア上で無理なく利用することが可能になる。

OSTI ドコモが公開したOSTIの構成図

 このOSTIを利用すれば、例えばケータイメーカーも独自のサービスを付加したサービスの開発が容易になり、独自の魅力を持つ端末を少ない開発費用で生み出すことが可能になるだろう。そして、このアーキテクチャは、通信機能周辺をハードウェアレベルでキャリアのコントロール下に置くことにより、純粋に情報をやり取りする手段としての通信という「土管」を提供するだけ=通信サービスのコモディティ化を防ぐ有力な手段になりうる。また、欧米では一般的なキャリアが開発、提供した端末をほかのキャリアでも利用可能にする「プラスチック(SIMチップのこと)ポータビリティ」を防止し、魅力的な端末により自社ブランドを際立たせるという現状の戦略の維持にも貢献する。

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