多くの科学者が、この困難に取り組んでいる。例えば、アリゾナ州立大学のTom Moore氏は、葉と光合成のプロセスを模倣した太陽電池を開発している。
ハーバード大学のSheila Kennedy氏は、KVA MATxが主導する「PORTABLE LIGHT」プロジェクトに参加している。これは、昼間は採光、夜間は明るい読書灯として使用できる太陽電池を布地に織り込むものだ。
Biopower Systemsは、海藻やマグロの動きに着想を得た波力発電システムを開発している。同社はこの製品を2009年までに出荷する予定。
既に排出された二酸化炭素の処理方法に取り組む研究者もいる。ニューメキシコ工科大学では、二酸化炭素を溶剤に通すことで石灰岩化させるというシステムを研究するため、海洋石灰岩に注目している。また、Novomerという企業は、二酸化炭素を炭素ポリマーまたは生体分解性プラスチックに変化させる取り組みを進めている。
建築物のエネルギー利用削減においても、バイオミミクリーが研究されている。世界の二酸化炭素の約50%が建築物によって排出されている(自動車は約25%)。このためエネルギー効率の高い建築物を設計することが大きな課題となっている。これを受けて、7万8000名ほどの建築家で構成される米国建築家協会は、米国市長会とともに、「2030 Challenge」を採択した。この「Challenge(挑戦)」とは、各市で新たに建築するすべての建物で、化石燃料の排出量を現在の平均値の半分に削減し、2030年までに、新築または改築されるすべての建物で、二酸化炭素の排出と吸収を同量にするというものだ。
このような取り組みはどのように実現できるのだろうか。現在、いくつかのプロジェクトが進行中だ。例えば、ジンバブエのハラレ市に完成したイーストゲートショッピングセンターがその良い例だろう。このショッピングセンターには冷暖房設備がない。あるのは蟻塚をモデルにした換気道だけだ。この構造により、従来の工法で同じ規模の建築物を作成した場合に比べ、90%以上のエネルギーを削減できる。
マサチューセッツ工科大学とQinetiqの研究者も、大量のエネルギーを消費するポンプを使用しない、水の入手方法を開発している。これは、ナミブ砂漠に生息する甲虫を模倣する研究だ。この甲虫は霧の水分を体表に集め、摂取する。また、Pax Scientificは、貝殻などの自然界に存在するらせん形に似せた送水ポンプやPC用ファンを開発している。例えば、デザインの調整だけでエネルギーを最大80%削減できる場合があるという。同社のデザインはその関連企業PaxITを通して、Delphiなどの企業にライセンス供与されている。
「自然界では、私たち自身が生き続けるだけでなく、1万世代先の子孫も生かし続けて初めて、『成功』と呼べる。そして、これは決して簡単なことではない」とBenyus氏は話し、次のように続けた。「私たちは、人類がかつて経験したことのない進化の道を歩んでいる。しかし同時に、自然の適応力という英知の助けを借りることができる」
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。 海外CNET Networksの記事へ
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