政府系機関の独立行政法人中小企業整備基盤機構関東支部が主催する東京コンテンツマーケット2006(TCM)が10月27、28日の両日、六本木ヒルズ森タワー40階にあるアカデミーヒルズにて開催されている。こちらのイベントには、「TCMコーディネーター」として、イベント企画の協力から出展、アワードの審査、出展者向けのセミナー講師までやらせていただいた。
今回で5回目の開催となるTCM。昨年までは東京国際フォーラムで開催されてきたが、先に開催されている第19回東京国際映画祭(10月21〜29日:このウェブサイトはシンクがお手伝いさせていただいた)と併設マーケットイベント「T!FFCOM 2006」(10月23〜25日)との連携を強める意味で、初のアカデミーヒルズでの開催となった。
ちなみに、このイベント当日に至る道程は厳しい。事務局の方々ももちろんだが、コーディネーターを仰せつかった人間もかなりの労力が課せられる。例えば、膨大な数の出展資料やアワード応募作品に目を通すのは、孤独で、物理的にも辛い作業だ。
分厚いファイル数冊分にも及ぶ応募票を丁寧に読み込んだ上で、応募作品に目を通し、応募の意図や作品の事業展開の可能性などをおもんぱかりながら、限定された会場内にブースを出すこと(出展費用は原則無料で、事前に作品の事業展開を支援するセミナーの受講をすることもできる。これももちろん無料となっている)の是非や、作品としての完成度や可能性からアワード受賞作品を特定するプロセスへはいい加減な気持ちで臨めるものではない。
しかし、多種多様なクリエーターの方々の思いのこもった作品を見ることそのものは、楽しい経験であることに間違いない。特に、一目見るだけでもわくわくする展開を想像できるような作品と出会えたときは、しばらく一種の高揚感に近いものすら味わうことがあった。
実際に、全体的な作品の質的レベルは向上している。昨年静止画として応募した作品を動画化したTAKORASU氏が、動画部門賞とTCM2006サポーターズ賞の2つを同時受賞するなど、ただ「創りました、見てください」といった作品が減り、「より魅力的なコンテンツ作り」に趣向を凝らした作品が多くなっている傾向は顕著で、コーディネーターとしてのやりがいを大いに感じさせていただいた。
他にも審査のプロセスを通じて感じたことがいくつかある。
例えば、出展者が個人やグループといった小規模な事業であっても法人として応募してきている場合が相対的に増えたような気がする(きちんとした統計を作っていないので恐縮だが)。また、応募書類への書き込みがよりよくなされ、クリエーターとしてどんな展開を望んでいるのかが、よりわかりやすくなってきた印象がある。
いかんせんクリエーターといえばアーティストであり、目的とはすなわち芸術性を具現化した作品の完成であるため、なにごとも「先生方の御意にて」といった感覚で許されてしまうところがある。もちろん、そういった「作家性」なくして、優れたコンテンツは存在し得ない。しかし、なにごとも最適な配合比率が存在するはずであり、ましてや世界的にも最も成熟した消費者文化を擁した日本市場を対象にする限りは、独り善がりな作品創りはおのずと収益性に限界が生じ、それへの投資などもされなくなる。
もちろん、ウケることが究極的な目的であるという気は毛頭ない。また、ウケるというエンターテインメント性だけがコンテンツの存在価値でもない。生産性を向上させたり、学習や理解を支援したりするようなコンテンツの姿も実は非常に重要なはずだ。
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