人気ブログのメディア・パブが「Googleの独り勝ちか,ではYahooはどうする」というエントリで、YahooがMicrosoftに買収される可能性についてふれたFred Wilsonというベンチャーキャピタリスト(VC)のブログを採り上げていた。今日は、この話題を補足する(?)意味で、少し前--買収交渉を進めていたYouTubeをGoogleに「横取り」された直後に公開されたNew York Timesの記事(「Yahoo’s Growth Being Eroded by New Rivals」について紹介する。
なお、Yahooの財務状況等については、「isologue(イソログ)」でお馴染みの磯崎哲也氏が先ごろ書かれた「ヤフーの財務から見る、『海外展開』と『文化』の関係」というコラムのなかで詳しく説明されているので、こちらもご参照いただきたい。
さて。上記のNYTimes記事によると、Yahooはいま「内憂外患」という言葉があてはまる状況に置かれているようだ。同社は9月中旬に、自動車および金融関連の広告売り上げ不振を理由に、同四半期の収益予想を引き下げていた(「Yahoo says ad slowdown to crimp sales」)。このMarketWatchの記事によると、自動車と金融関連の広告はヤフーの売上のうち最大で約5分の1を占めるということで、いわゆる「ビックチケットアイテム」を扱うこの2つのセクターの減速がYahooに大きな影響を及ぼすことは理解できる(今夜遅くに、四半期決算の発表が予定されているので、明日朝になれば実際のところがわかるだろう。すでにMotley Foolでは、この発表を織り込んで、「Buy Google, Sell Yahoo!」といった見出しが踊っているようだが)。
ただし、NYTimesの記事を読むと、いまのYahooにはそうした一過性のものとは別に複数の問題があることがわかる。以下にそれらの問題を書き出してみる。
まずはYahooの現状。今年に入って株価が4割近く低下し、現在の時価総額は約340億ドルまで減少。ちなみに、Googleの時価総額は1300億ドルを超え、Yahooの約4倍弱に迫っている。また両社の流動性を比較すると、Google:110億ドル対Yahoo:40億ドルと、これも3倍近い開きがある。
いっぽう、トラフィックについては、月間のユーザー数が4億人でいまなお最大だが、この9月のユニークユーザー数は1億600万人で伸び率はわずか6.5%にとどまっている(同期間中のGoogleの伸び率は25%)
News Corp.のMySpaceなど新しい人気サイトが台頭するなかで、大手広告主に対するYahooの訴求力が低下し、かつてはYahooに渡っていた広告予算がそれらの競合サイトに流れている。「Yahooは1、2年前なら謳歌できたはずの顧客の好意("favor")を失ってしまった」(Universal McCannのSVP、David Cohenのコメント。同社はInterpublic Groupのメディアレップ)。
「Panama」という新しい広告配信用システムの開発が予定より1年以上遅れている。このため、テキスト広告ビジネスがほぼ凍り付いているほか、エンジニアリングのリソースがこのシステムの開発に割かれ、新しい広告商品を開発できない状況にある。その結果、テキスト広告の生産性でGoogleに大きな差を開けられ、広告配信の契約を勝ち取れなくなっている(MySpaceへの広告提供をめぐる3つ巴の戦いで敗れたのもその一例)。 (筆者注:その後、Yahooは決算発表と相前後して、この「Panama」によるサービスを開始したことを明らかにした)
Yahooがもたついている隙に、GoogleはYouTubeを16.5億ドルで買収したり、10億ドルでAOLの5%を取得したり、MySpaceに3年半にわたって広告を提供する権利を9億ドルで手に入れるなどして、自社の広告提供スペース(在庫)を着々と拡充。さらに、これまでのテキスト広告に加えて動画を使ったブランド広告などもそろえ、広告業界(Madison Avenue)に対するYahooの強みを中立化(neutralize)させてしまったという。今月はじめにGoogleがニューヨークのマンハッタンに500人を超える従業員が働く新オフィスを構えた、というニュースがあったが、これはこの指摘の傍証と考えられよう。
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