ビットバレーの創始者「ネットエイジグループ」が、マザーズ上場を通して見ているものとは? - (page 2)

インタビュー:西田隆一(編集部)
文:坂本和弘
2006年10月12日 23時21分

--いわゆるインキュベーション会社が上場するということは珍しいと思うんですが、御社はどのような会社作りを心がけているんですか?

 デジタルガレージやドリームインキュベータのように、インキュベーション会社が上場した例は過去にあることはあるんですが、当社は先の2社とは違い、より純粋にゼロからのインキュベーションをやってきました。そして、青臭いというかあまり大人らしいやり方ではなく、いわゆる「ガレージベンチャー」という雰囲気を色濃く持ったやり方を貫いてきました。

 僕は、そういう場と雰囲気を作るだけでいい。その器の中で、えもいわれぬカルチャーや人間的なつながりが醸成され、何かが生まれてくるんですよ。「起業家排出企業」と言ってもいいかと思います。

--会社を成長させる、あるいは事業を成長させる上で、優秀な人材が出て行くというのは会社にとって惜しいことだと思うんですが。

 そうですね。本当ならば、そういった人材を囲い込んで、「ウチから出るなよ」とやるのが会社にとっては有意義なのかもしれません。しかしそれは、起業家になりたがっている若者に「夢をあきらめろ」と言っているようなものじゃないですか。それは酷というものです。

 だからといって、若者が起業したら「はいさよなら」では寂しい。だから僕らは、若者が起業家として巣立っていくのを後押しし、その流れの中で株式を持つのです。株式を持てば、その起業家の若者とつながりが持てますし、支援する理由にもなりますしね。

--上場後もその形態を続けていくんでしょうか?

 基本的には変わりません。ただ、上場の3年前に決めた「ネットエイジで生み出すものは連結会社として、連結シェアは失わないでキープする」というポリシーを貫いていこうと思っています。

 また、ネットエイジが自ら作るスピンオフ会社や、なんらかの縁でグループ入りする場合などは、いわゆる連結対象会社として長期的に株を保有する予定です。

--御社は広告事業の扱いが非常に大きいにもかかわらず、それがあまり知られていません。御社が考える今後の広告事業の展望などについてお聞かせ下さい。

 当社は、インキュベータ事業ばかりやっているように思われているんですが、実はそうではなく、広告事業にも力を入れているんです。たとえば今回のmixiのようなケースではそのイグジットは大きいですよね。じゃあそういうのがない場合どうしているのかといえば、自分で儲ける術をちゃんと持っている、と。

 では、具体的に何をやっているか。厳密に言えば、広告事業というよりは広告プラットフォーム事業なんですが、たとえるなら、ダブルクリック社の「DART」システムみたいなものですね(KLASS事業)。今、当社でやっているのは、いわば携帯版の「DART」システムです。広告スペースのなかった携帯サイトに、ユーザーの嗜好や関心に沿った広告を判断・配信するという、地味といえば地味なサービスなんですが、それが当社の収益を下支えしています。今、そういうサイトを無数に集めているところです。

 それと、CGM的なメディアを作ってトラフィックを増やし、増やしたトラフィックを広告に活用するのは当社の得意分野ですね。今後も、エンドユーザに「これはいいね」と言ってもらえるようなサービスを無料で使ってもらい、ページビューを稼ぎ、それが広告を通してお金に変わる、というパターンにフォーカスしていく予定です。

--御社の事業として海外向けのサービスなどを生み出したり、海外に進出していくということは考えていますか?

 韓国などのベンチャー企業だと、最初から世界に進出する目的を掲げて起業する傾向にあるらしいですが、当社はあまり海外を意識してサービスを作っているわけではありません。とりあえず、目の前にいる日本の人たちに使ってもらって、それがよほど良ければ海外にもっていく、という形で今はいいんじゃないですかね。

--最後に、なにかメッセージがあればお願いします。

 当社は、mixiの上場にともない、「投資会社」というイメージが強くついてしまいましたが、それは今後払拭していきたいですね。投資だけを専門にやっているわけではなく、さまざまサービスを自社で開発し、提供していますから。

 ただ、現在は次々にサービスを提供していっていますが、とりあえずこの流れは今回で一段落すると思います。たまたまいろいろなことが連続で出てしまいましたが、今後しばらくの間は、それらの新商品を育てることに尽力していきます。今後もワクワクするようなサービスを提供していくつもりです。

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