ベンチャー企業がより一層の成長を目指す上で、他社とのアライアンスは欠かせない。特に大企業とのアライアンスは知名度を高め、販売網を強化できることから、ベンチャー企業にとって大きなチャンスになる。その一方で、大企業側はベンチャー企業とのアライアンスに及び腰になることも多い。
どのようにすればベンチャー企業のアライアンスは成功するのか、そしてどういったことに気を付けておくべきなのだろうか。10月4日に首都圏情報ベンチャーフォーラムの主催で開催されたイベント「IT Venture Alliance Forum 2006」では、他社とのアライアンスに成功した企業の代表者が登壇し、実例を交えながら成功の秘けつを語った。
最初に行われたセッション「成長を目指すベンチャーにとって必要なアライアンス戦略を聞く」ではオンラインゲーム「Maru-Jan」を開発、運営するSignalTalkのアライアンス事例を中心に議論がされた。SignalTalkはコンテンツファンドの仕組みを使ってMaru-Janの制作資金を集めており、このファンドにはeマーケティング事業を展開するオプトなどが出資している。
オプトがMaru-Janに投資したのは2004年2月のこと。ジャスダックへの上場と時を同じくしている。Maru-Janへの出資を決めた理由をオプト代表取締役CEOの海老根智仁氏は「オンラインゲームが登場してきて、オプトとしても布石を打たねばならないと考えた。研究開発の一環としての投資だった」と話すが、上場を控えた企業は少しでも支出を抑えて業績を良くするのが一般的だ。この時期にまだ始まっていないサービスに投資をするには大きな決断がいる。
実際、社内では反対する声もあったという。それを押し切れたのは、まずSignalTalk代表取締役の栢孝文氏がゲーム業界に深い知識を持っているため、アライアンスを通じていろいろな情報が得られると考えたこと。そして何よりも、海老根氏自身が麻雀好きで、Maru-Janを見た時に「これは流行るかもしれない」と感じて投資への強い情熱を持てたことが大きいという。
情熱というとありふれた言葉にも聞こえるが、特にベンチャー企業のアライアンスでは、双方が達成に向けた情熱を同じように持てるかが成功の鍵になると海老根氏は話す。なかでも意志決定権を持つ人だけでなく、現場の1人1人が同じ気持ちを共有できるかできないかは成功の分かれ目になる。そこでオプトでは、プロジェクトにかかわるメンバーに同じ情熱を持たせることを任務とする「情熱オーナー」をプロジェクトごとに任命しているというのだ。
また、SignalTalkでもプロジェクトメンバーが意欲的に取り組むようにし向けるために、ゲームの販売で得た利益をメンバーで分け合う報酬制度を導入している。情熱という形のないものを共有するには制度として確立することが欠かせないという点で、海老根氏と栢氏の意見は一致した。
Maru-janは5000万円のファンドを元にサービスを開始し、約1年半で10万人の会員を獲得した。現在は1カ月の売り上げが「数千万円の下のほう」(栢氏)という規模にまで成長している。SignalTalkはアライアンスを通じて大きな成功を得たが、それは出資したオプトにとっても同様だ。Maru-janの販売支援を通じて、ゲームのプロモーションに関するノウハウを得たことが財産になったという。現在ではゲーム業界がオプトの大きな顧客の1つとなり、担当部署が1つの事業部になっているとのことだ。
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