7月より進めてきたカフェグルーヴの映画情報サイト「cinemacafe.net(シネマカフェ)」のリニューアルが終了し、9月1日に本格始動した。1997年のサイトオープン以来の最大規模のプロジェクトだという。
メディアを支える基幹システムを新たに開発したほか、コンテンツ、デザイン共に一新。低コストで質の高いメディアを生み出す仕組みを確立するとともに、Web 2.0と呼ばれる新しいインターネットの流れにも対応した。今回のリニューアルに伴うメディア戦略、そして今後の展開について代表取締役社長の浜田寿人氏に聞いた。
最も大きな点は、独自のコンテンツマネジメントシステム(CMS)を新しく開発したところにあります。我々は「メディアマネジメントシステム(MMS)」と呼んでいますが、これまで我々がメディアとして積み重ねてきたノウハウを詰め込んだ、コンテンツやサイトを量産できるシステムです。
通常のCMSと異なり、MMSはモジュールを組み合わせて利用できる点が最大の特徴です。通常のCMSでは機能が決まってしまうため、サイトのデザインに制約が生まれてしまいますが、MMSはサイトごとに必要な機能を選んで利用できるため、デザインの面でも可変的領域が大きく、汎用性も高くなります。
これまでは新しいサイトを立ち上げるごとに、システムを一から作らなくてはいけなかった。しかし、MMSを使えば足りない部分だけを追加開発すればいいんです。これまで新しいサイトを作るのに3カ月程度かかっていましたが、それを半減できると見ています。
シネマカフェはオープンして10年になりますが、当初の数年間はずっと赤字でした。なぜそれでも続けてこられたかというと、圧倒的に低いコストでサイトを運営してきたからなんです。1つのサイトを1〜2人の編集スタッフでつくってきました。他社の方に話すとびっくりされるんですが(笑)、外部のスタッフをうまく使いながら運営しています。
ただ、それも限界が近づいていたんです。そこで、日々の業務を見直したところ、必要のない部分にまでデザイナーが介在しているなどの無駄があった。もちろん広告が関わってくるタイアップ記事や、編集部の手による特集コンテンツのように、シネマカフェとしての色を出したいところではデザイナーを介在させて、きっちりと作りこんでいく必要があります。しかし、例えばニュースなどの記事は、原稿を編集者が確認したら、デザイナーの手を介さずにサイトに掲載できたほうがいい。編集者が記者会見の場や劇場で記事を書いてサイトを更新できるようにしたかったんです。ニュース以外のコンテンツについても、MMSを使うことでこれまで製作に1週間かかっていたものが2日くらいでできるようになりました。
もっとも、システム化したときにサイトのデザイン性が失われれば、サイトがきれいであるとか、おしゃれであるという当社の優位性が落ちてしまう。それを避けるために、モジュール化という発想を盛り込んだんです。
このほか、これまでまったくしていなかった検索エンジン対策(SEO)機能も実装しています。これにより、MMSを導入してから2週間で、アクセス数は5倍に増えました。それまではシネマカフェのファンの方のアクセスがほとんどでしたが、MMS導入後には、一般的な映画ファンの方のアクセスも増え、今まで全くアクセスのなかった「たまたま検索したら引っかかった」という人も激増しています。ロングテールの部分を確実に拾いはじめていますね。
要望はあるのですが、これは自社だけで外には出しません。導入までに3年間ほど議論を重ねて、1年の開発期間をかけて作ったもので、開発コストも1億円ほどかかっています。自社でアップデートを重ねて、最強のメディアを作るCMSにしていく予定です。
そうですね。今回は圧倒的にニュースにこだわっています。Web 2.0の時代には(多くの人が1つのデータベースを作り上げる)ソーシャルデータベースやCGM(Consumer Generated Media)を通じてコンテンツが自動生成されていくというイメージが強いのですが、メディアとしては、それだけではだめなんです。
編集部ならではの取材力を元にしたニュースや情報がまず必要で、それを元にしてユーザーには「遊んで」もらうべきだと思っています。例えると、何もない土の上ではなく、僕らが芝を敷いて、そこで遊んでもらおうという考え方です。
特に映画は、感想や評論が書きやすいものです。2005年にブロガーが激増しましたが、2006年の現時点で、ブロガー達は書くネタに困っています。日々の生活で大きな出来事というのは、そんなにたくさんあるものではないですからね。そういったときに、映画はネタとして最適です。
ただ、現状ではオフィシャルな映画情報を簡単にブログに引用できるようなツールががないので、それを提供していこうと思っています。
Web 2.0の流れのなかでは、編集者がコンテンツを作るようなレガシーメディアは駆逐されるかと思われがちですが、逆に信用力のある情報というのは求められてくると思います。しかし、他社にない独自コンテンツを持たない限り、メディアとしての軸を失ってしまうでしょう。
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