Web 2.0時代におけるポータルサイトの役割とは - (page 3)

インタビュー:永井美智子(編集部)
文:野田幾子
2006年07月04日 08時00分

ユーザー同士をつなぎ、引きつけ収益を上げる

--Web2.0は技術的に面白いと言われる一方で、収益をどう上げるかという議論も尽きません。この点についてはどう思われますか。

  収益に関しては難しい面もありますよね。コミュニティに広告を掲載することも難しいし、かといって有料化できるわけでもないし・・・ということで、我々は足踏みしてしまった時期がありました。

 でも過去の歴史を紐解いたら、例えばヤフーにしてもトラフィックを伸ばしたのは掲示板、(ホームページスペースの)ジオシティーズ、オークション--つまり、全部個人の情報発信サービスなんですよね。そこでユーザーを抱え込み、広告収入につなげていっているわけです。ですから、Web 2.0においても収益を得るチャンスはあると睨んでいます。

 エキサイトブログでは、アフィリエイト広告を排除したり、巡回パトロールでアダルトやポルノを外したりしていますから、質の高いブロガーが集まっていると思いますし、このスタイルは続けていきたいですね。そういった質の高い情報発信者がいるからこそ、ネームカードの価値が出るのではないでしょうか。

 とにかく、一歩ずつ進むのが大事だと思います。例えば表参道と渋谷、新橋、新宿では歩いている人の層がまったく違うでしょう。明確な街のイメージに集まる人たちの方が、より深いコミュニティが作りやすい。まったく異なる価値観の人へ提供するサービスと、ある程度価値観が似ている人へ向けたサービスでは明らかに質が異なることを意識しています。

--では、具体的にはどういったところで収益を上げていくのでしょうか。

 広告の収益自体が減るとは考えていません。現在、1日400万人ほどの方がエキサイトにアクセスしていますが、これを600万、1000万人に持っていく。また、EC部分をまだまだ伸ばせる余地はあるでしょう。1000万人が1カ月に1000円使うのか3000円使うのかが重要になってきますよね。商品ラインアップに広がりが出てきているので、積み重ねで伸びていけると思います。

--Web 2.0という流れの行き着く先はどういったものだと思われますか。

 PtoPは無数の知らない人がつながっていくわけで、「それをつなげてあげるような場所」が必要だと考えています。例えばネームカードに表示されるのがニックネームだけではなく、その人がどういうところに出没しているか、どういう音楽を聴いているか、どういうものに興味があるか、どういうブログを書いているか、どういう記事をクリッピングしているのか--というようになれば、その人大まかな姿が想像できてくる。そうしたら、趣味嗜好などを軸にしたコミュニティができます。エキサイトはそういったコミュニティ形成の役割を担えるのではないかと思います。

--では、エキサイトにとって一番のライバルは。

 ライバルという言葉が正確かどうかはわかりませんが、私自身はヤフーの姿しか見ていません。やはりヤフーにないもの、より優れたモノを、ヤフーよりも早く提供することが使命です。ヤフーだけが強い状態に疑問を持っているのもありますし。

 もちろん「僕は絶対にヤフーでなければダメなんだ」「ヤフーが大好き」というユーザーもいることは確かです。でも、アクセスするのがYahoo! JAPANだけ、という人もほとんどいないのではないでしょうか。例えば、メールはHotmailでオークションはYahoo!オークション、書籍を買うならAmazon.co.jpというようにね。その使い分けの選択肢の中にエキサイトが入っていければ、ひとつ風穴を開けられるのではないかと思っています。

 いま現在で「ヤフーを抜きます」と言っても単なる夢物語に終わってしまうでしょう。ヤフーと違うサービス化をきっちり作って、自分のポジションを固めていく。勝てる部分を少しずつ増やして凌駕していくこと、この地道さが大切だと思っています。

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