補償金制度の見直しポイント、問題点を探る--第3回私的録音録画小委員会

梅田勝司(アールイー)2006年06月30日 08時13分

 6月28日に開催された第3回文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会では、第2回の審議で告知されていたとおり、今回は録画に関する研究が主題となった。

 文化庁長官官房著作権課から発表された「私的録画をめぐる実情の変化等」では録音と同様にハードディスクドライブやDVDといったデジタルメディアへの記録が急増していることが浮き彫りになった。続いてビジネスモデルと技術的保護手段の現状について日本放送協会総合企画室(デジタル放送推進)統括担当部長藤沢秀一氏、東京放送メディア推進局デジタル放送企画部長の稲葉悠氏、日本民間放送連盟デジタル推進部長の竹内淳氏ら3名から説明があった。

 特に話題となったのはデジタル放送のコピーワンス制限によるコピーコントロール方法だが、その枠内でオリジナルを残しつつ、DVDやメモリカードへのムーブ用に別バックアップファイルを同時作成するという案も紹介された。ただしこれは正式案ではなく、まだ模索中だという。

 続いて議題は「今後検討すべき事項に関する論点の整理について」に移ったが、ここでは権利者、コンテンツプロバイダやメーカー、消費者などそれぞれの立場を代表する委員から補償金制度に関する意見が発表された。

 日本音楽作家団体協議会理事長の小六次郎氏は「そもそも私的複製とはどういうものだったかを思い出して欲しい」と語った上で「音楽をコピーするのはひとつの文化で、息苦しくならないように補償制度がある」とした。しかし現状の私的複製ソースを見ると、CD分ではこれまでに生産された累計曲数570億曲に対し、音楽配信された(著作権保護された楽曲)は12百万曲でわずか0.021%に過ぎない。著作権保護技術は私的複製の全体をカバーし得ないし、カバーできる未来像が見えないという。その上で、「関係権利者やコンテンツホルダー、消費者に受け入れられ、消費者のプライバシーを保護し、永続的な有効性が保障できて、有効に機能する技術があるなら小委員会の中で取り上げてもらいたい」と述べた。

 実演家であり権利者の立場である日本芸能実演家団体協議会実演家著作隣接権センター・CPRA委員の椎名和夫氏からは「補償金制度は時代遅れな制度ではなく、手直しをして維持するべき」で、「利便性の確保」に重点を置きながらもユーザーの側を向いた制度にしなければならないという。ハードな著作権保護技術で家庭内まで細かくコントロールすることは「文化的な環境」とはいえないとも説明する。そこで、制度の見直しが必要で、補償金の支払い義務者は、ヨーロッパのようにメーカーを義務者とするのが適当ではないかなど、現状の問題点、改善策を挙げながら「補償金制度の再構築運用が最善」としめくくった。

 ほかに社団法人日本レコード協会専務理事の生野秀年氏、日本放送協会ライツ・アーカイブセンター 著作権・契約部長の石井亮平氏、社団法人日本民間放送連盟常勤顧問 の森忠久氏、社団法人日本映画制作者連盟事務局次長の華頂尚隆氏、主婦連合会事務局長 佐野真理子氏、IT・音楽ジャーナリストの津田大介氏、社団法人電子情報技術産業協会法務・知的財産権総合委員会 著作権専門委員会委員長の亀井正博氏が意見を述べた。

 その中では華頂氏が「iPod型複製機器の出荷台数はオーディオプレイヤー市場の64%を占めるまでになった。音楽を聴くデバイスが単純に音楽CDやMDからiPod型のハードディスク内蔵型・携帯用音楽再生機器に移行した。いつの間にか補償金制度はそもそも(制度として問題がある)という話になっている。技術の話も必要だが、論点をiPod型の音楽再生機器を政令指定するか否か当初の具体論に戻すべきでは」との意見が出された。

 また、津田氏は「せっかく2年の時間をいただいたので、そもそもから話し合っていくのはいいこと」とした。そして、音楽は他のコンテンツに比べて繰り返しリピートされて楽しまれることが多いコンテンツで、コピーできるようにしておくことに意味が出てくるという。

 津田氏によれば2004年前後から電車内の光景が変わり、それまでは携帯電話を操作する若者ばかりだったがiPodなどのデジタル携帯プレイヤーで音楽を楽しむ人が増えたと説明する。これはiPodをはじめとした製品の出荷数からも明らかだという。その時期から、1998年から急激に減っていた音楽CDの出荷枚数も下げ止まりが見られると説明する。これは「iPodやパソコンなどで新しい音楽の楽しみ方がリスナーに定着し、音楽への興味が戻ってきたのではないか」と、私的録音がもたらすポジティブな要素についても意見を述べた。

 第4回の審議はこれまでの発表や意見をまとめたうえでの討議を主題として、7月27日に開催される予定だ。

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