PCやHDD搭載のメディアプレーヤーを私的録音録画補償金の対象とするかを話し合う文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会」の今年2回目となる公聴会が5月17日に開催された。会では私的録音をめぐる実情、ビジネスモデルの現状、技術的保護手段の現状について委員ならびにオブザーバーからの発表があり、勉強会的な内容となった。
小委員会は、2005年に文化審議会著作権分科会法制問題小委員会にて結論が出なかった、いわゆる「ipod課金」問題など、急激に変化した音楽、動画利用に対する補償問題について検討するべく2006年度より新設された。4月より毎月1回、委員会が開催されており、12月に著作権分科会へ審議結果を報告する予定だ。
会はまず文化庁長官官房著作権課による「私的録音をめぐる実情の変化等」のレポート発表から始まった。私的録音においてはデジタル機器の普及でアナログでの年間平均録音回数を大きく上回っている現状、私的録音の音源や理由を示した。
そのうえでオーディオレコードや音楽ビデオ、音楽配信事業の売り上げが下降していること、レンタル市場の推移、JASRAC使用料の推移、さらにパソコンの出荷実績やCD-R需要、携帯ミュージックプレイヤーの国内出荷数などの推移、ファイル交換ソフトによる音楽の複製など、多くの要素が私的音楽録音の現状を変えていることを説明した。
次に三菱UFJリサーチ&コンサルティング芸術文化政策センター主任研究員の木下義之氏がオブザーバーとして「ビジネスモデルの現状と未来について」と題したレポートを発表した。レポートでは音楽配信のビジネスモデルを類型化して紹介した。
しかし、アップルとソフトバンクのコラボレーションが一部メディアで報道されたように、「毎日のように新しい発表があり、近未来を予測しなくては追いつかない」とし、「音楽ユーザーが望んでいるのは選択可能性、オプション価値の増大」と、近く登場が期待されるビジネスモデル例をあげた。そこでは米Napsterの展開する「無料」も含めた多様なオプションも紹介され、さらにデバイスや課金方法、メジャー、マイナーの区別のない多様なオプションが選択できるサービスがあげられた。
続いて、社団法人電子技術情報産業協会法務・知的財産権総合委員会/著作権専門委員会副委員長であり小委員会委員でもある河野智子氏より著作権保護技術の現状についての説明があった。ここでは、著作権保護技術のタイプと特徴、さらに採用例、歴史を説明した上で保護技術と私的録音の関係に触れた。
中でも河野委員が強調したのは「ユースルール」だ。これは単にコピーを禁止および抑制するだけでなく、コピー世代やコピー作成個数の制限、転送や出力のコントロール、再生コントロールなどコンテンツプロバイダ側で利用可能な範囲をあらかじめ設定することで利害を著しく損なうことなく市場に提供できるというもの。発表後は委員から質問が相次いだが、ここでは保護技術の内容を理解するためのものが多く、理解している河野委員と話がかみ合わない場面も見受けられた。
最後はソニーミュージックエンタテインメント コーポレート・スタッフ・グループの佐藤亘宏氏が日本レコード協会から依頼を受けた形で「レコード会社から見た音楽のデジタルフォーマットにかかわる技術動向について」オブザーバーとして発言。これまでの保護技術についての歩みを振り返るとともに、失敗に終わった保護技術について要因を列挙した。特にパソコンで音楽を扱うことについての対応が遅れたことをあげ、パッケージ(CDなど)はCCCDに移行、その最新技術動向について説明した。
次回の委員会は6月28日に開催され、私的録画についての勉強が主になる。また、委員会から「権利者、消費者など利害のある立場の方は、それを踏まえたうえで発言してほしい」との要望も述べられた。
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