ブロードバンドサービスプロバイダーが、ビデオサービスなど、特定のサービスのみを対象とした高速データ通信サービスを提供することを禁止する法案が、法制化に向け一歩前進した。
米下院司法委員会は米国時間5月25日、ブロードバンドプロバイダーに対し、厳格なネットの中立性の原則の遵守、つまり、ネットワークを「全てのサービスに対して公平に」運営することを義務付ける法案の採決を行った。その結果、一部の共和党の委員が党の方針に従わずに賛成に回ったため、20対13で可決された。
同委員会の民主党の委員14人は全員賛成票を投じたのに対し、共和党の委員は13人が反対票を投じ、6人が賛成に回った。
今回の採決の結果は、Amazon.com、Google、Microsoft、Yahooなどのインターネット企業にとっては予想外の勝利だった。Amazonらは過去2、3カ月間、議会に対し、(ネットの中立性の実現に向けた)より厳格な法を制定し、VerizonやAT&Tなどのブロードバンドプロバイダーが、自ら選んだビデオなどの優先度の高いコンテンツ専用の「高速レーン」を設置する道を完全に閉ざすよう強く働きかけてきた。
下院司法委員会委員長のF. James Sensenbrenner氏(ウィスコンシン州選出、共和党)は、「ブロードバンドプロバイダーが、その圧倒的市場支配力を駆使してブロードバンド市場への新規参入を妨げ、(自分好みの)インターネットコンテンツを事前に選別し、一部のコンテンツを特別扱いし、コンテンツ間の優先順位をつけようとしているのは明らかだ。プロバイダー各社がそのような行動に出るのは、ブロードバンド市場が全くの無競争状態だからだ」と指摘した。
同法案が下院司法委員会で可決されたのは予想外の展開だが、同委員会の多くの委員は、彼らが同法案に賛成票を投じたのはネットの中立性に対して強い懸念を抱いているからではなく、同法案には委員会間の「縄張り争い」が絡んでいるからだと語った。彼らは、4月に別の委員会で可決された競合法案が法制化された場合に、将来、司法委員会の影響力が低下することを懸念している、と胸の内を明かした。
その競合法案とは、通信の機会、促進、高度化法(Communications Opportunity, Promotion, and Enhancement Act of 2006:COPE)と呼ばれる法案だ。同法案には、連邦通信委員会(FCC)にネットの中立性の原則に違反する行為を調査する「独占的権限を与える」と規定されている。下院エネルギーおよび商業委員会のJoe Barton委員長(テキサス州選出、共和党)が支持する同法案には、ネットの中立性の遵守に関する厳格な命令は含まれていない。
FCCはエネルギーおよび商業委員会の監督下にあるため、仮にCOPEが法制化されれば、司法委員会の委員らは、ネットの中立性関連の独占禁止法違反に関する公聴会の開催、企業の違法行為に関する演説、さらに(違法行為の)影響を受ける企業からの選挙資金集めといった、現代の米国の政治家たちが政治活動を行う上で生命線とも言える活動が事実上不可能になってしまう。
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